漫画作品の中でも、特に漫画家さんのセンスであったり物語の構成力が試されるのが1巻完結漫画、そして読み切り短編集などです。
理由はシンプルで、短ければ短い程に掘り下げる事が難しくなる為です。
キャラクターへ深く感情移入させる事も難しくなりますし、世界観が特殊である場合などに説明にページを費やし過ぎればそれだけで描けることが少なくなってしまいます。
バランス、センス、構成力。
その3つが揃っていないと面白くする事が難しいのが短い漫画作品なのです。
このブログ『ヨミキリ』では、そんな凝縮された面白さだけを追い求めた1巻完結漫画や読み切り短編集のみを紹介しています。
長期連載漫画に無い魅力に関しては、長くなってしまいそうなので過去に熱弁した記事を興味あれば読んでみてください↓↓
普段僕は長期連載作品も勿論読みますが、最近はこのブログをやっていることもあって1巻完結の漫画を読む比率の方が大きいです。
そんな僕が、一旦ここで「マジにこの漫画は読まなきゃもったいないよ!」と言えるレベルに面白かった漫画を選んでみました。
クセがあったり、超面白いけど万人受けはしないだろうな、という作品も多々あるのですが、そういった「尖った」作品は省き、比較的誰が読んでも面白いんじゃないだろうかと思える作品に絞って今回は選びました。
紹介する全ての漫画は個別の紹介記事がありますので、気になる作品があればそちらも読んでみてください。
1巻完結漫画は気軽に読めるのも大きな魅力です。
暇つぶしでもいいですし、宝石のようなお気に入りの一冊を探している方でもいいので、今回選んだ漫画は全て超面白いと自信を持っておすすめできるので、迷ったらもう読んじゃってみて欲しいです。
きっと後悔させません。
本当に「読まない事がもったいない!」と思うほどに面白い作品たちなのです。
無料で読むことができる読み切り漫画は、カテゴリを分けて特集しています。
もし1巻完結でなく純粋な読み切り漫画を読みたい方はそちらもチェックしてみてください。
では早速、漫画家さんたちの命の結晶とも言うべき素晴らしい1巻完結漫画を紹介していきます。
- 『さよなら絵梨』藤本タツキ
- 『水上悟志短編集 放浪世界』水上悟志
- 『not simple』オノ・ナツメ
- 『ひきだしにテラリウム』九井諒子
- 『アガペー』真鍋昌平
- 『SAND LAND』鳥山明
- 『アイリウム』小出もと貴
- 『呪術廻戦0東京都立呪術高等専門学校』芥見下々
- 『ききみみ図鑑』宮田紘次
- 『マタギ』 矢口高雄
- 『永沢君』さくらももこ
- 『告白』 福本伸行/かわぐちかいじ
- 『スキエンティア』戸田誠二
- 『世界の合言葉は水 安堂維子里作品集』安堂維子里
- 『春風のスネグラチカ』沙村広明
- 『山羊座の友人』乙一・ミヨカワ将
- 『未来歳時記 バイオの黙示録』諸星大二郎
- 『田中雄一作品集まちあわせ』田中雄一
- 『犬釘を撃て!』伊図透
- 『旅する缶コーヒー』マキヒロチ
- 『雑草たちよ 大志を抱け』池辺葵
- 『ネムルバカ』石黒正数
- 『夢中さ、きみに。』和山やま
- 『夕凪の街桜の国』こうの史代
- 『幻怪地帯』伊藤潤二
- 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 押見修造
- 『闘茶大名 利休七哲』工藤かずや/西崎泰正
- 読まなきゃもったいないレベルの1巻完結・読み切り漫画はとにかく読むべし!
『さよなら絵梨』藤本タツキ
映画やクリエイティブ好きな方必読の大奇作
藤本タツキ先生の映画愛とトリッキーな構造が爆発している凄まじい奇作。
「虚構と現実」の曖昧さに読者も大いに翻弄されてしまう、人によっては???となってしまうかも知れない衝撃作です。
実験的なのにものすごく惹き込まれ、何度も繰り返し読みたくなること間違いなし。
作中語られる「クソ映画」を地でいっているような作品でもありながら、こんなの見たことない!という驚きに溢れた「神漫画」な雰囲気も併せ持っている本当に説明が難しい作品。
あなたが何を感じるか、それすらも未知。
とにかく予備知識無しでまずは「フツーに読んでくれ」と思います。
『水上悟志短編集 放浪世界』水上悟志
漫画的面白さに溢れた傑作SF短編集
5つの異なる物語が収録されている短編集で、ほっこりしつつも深くておもしろい物語から、思わず笑っちゃうような物語、そして実に考えさせられる読み応え満点のSF読み切りまで、実に満足度の高い傑作短編集です。
冒頭に収録されている『竹屋敷姉妹、みやぶられる』でのほっこり感と、最後に収録されている『虚無をゆく』の極上のSF作品感のギャップもすごい。
読めばわかる、とにかく面白くて短編集としての全体的な読み応えと読後感も最高なぜひ多くの方に読んでほしい1冊です。
『not simple』オノ・ナツメ
ダークで複雑な極上のヒューマンドラマ
タイトルの通り、シンプルじゃない人間模様が描かれているオノ・ナツメ先生の傑作漫画。
明るい話ではないのですが、複雑な想いや境遇が絡み合って、シンプルでない読後感に浸れる作品になっています。
1巻完結漫画としてもボリュームがあるほうなので、どっしり腰を据えて読んでほしい作品でもあります。
悲しい気持ちにもなり、前向きな気持にもなる。
さらに泣けもするし、腹が立ったりもする。
まさにnot simpleに読者の感情も揺さぶられる、映画のような傑作漫画です。
『ひきだしにテラリウム』九井諒子
複数ジャンルのファンタジックオムニバス短編集
短い読み切り作品の天才的名手として九井諒子先生のセンスが大爆発している傑作『ひきだしにテラリウム』。
このブログでは九井諒子先生作品は他にも『竜の学校は山の上』と『竜のかわいい七つの子』も紹介しているのですが、どの短編集を読んでもとにかくひたすらに発想がすごい。
九井諒子先生と言えば『ダンジョン飯』を思い浮かべる人も多いかと思いますが、あの独特な切り口の漫画も短編集を読めば大いに納得できる発想の天才っぷり。
さらに、どの物語も世界観の作り込みと、物語性がしっかりしているのもすごいです。
『ひきだしにテラリウム』にはなんと30近い短い短編が収録されており、それぞれが異なる世界観、異なる面白みがあり「参りました」状態の傑作になっています。
九井諒子先生のとんでもない発想力で作り出された様々な世界に浸ってみてほしいです。
『アガペー』真鍋昌平
深すぎる人の心の闇に震えるさすが真鍋先生な短編集
『闇金ウシジマくん』などで有名な真鍋昌平先生による、圧倒的現実感と圧倒的人間感が最高な短編集です。
表題作でもある『アガペー』はアイドルオタクの物語で、その情熱と悲哀、またアイドル側の描写もありとても深い傑作になっています。
全体的にポップに読める作品ではありませんが、どの短編もとても深い読み応えのある短編集になっており、読む人によって全然違う感想を持つような不思議な魅力を持った傑作になっています。
『SAND LAND』鳥山明
天才鳥山明先生のセンス爆発のお手本のようなファンタジー傑作
「鳥山明先生のはドラゴンボールでお腹いっぱいです」
なんて思ってるあなた! もったいない!
鳥山明先生が「老人と戦車が描きたい」という動機で産まれたのが『SAND LAND』で、短編ではなく1巻完結の繋がった1つの物語になっています。
砂漠化の進んだ地球での水を求めての悪魔と人間との冒険譚で、鳥山明先生が好きそうな人物や設定が目白押し。
先生自らが描きたい事を描いていてつまらないわけがないのです。
まず、鳥山明先生の描く全てのものが魅力的です。
丸っこくてカッコいいメカ、可愛くてチャーミングな悪魔や爺さん、荒涼としているはずなのにワクワクしちゃう砂漠の広がる世界。
そして物語は超王道なのにすごく楽しい展開。
この項目で一番最初に書いた鳥山明先生作品への想いは、実は僕が思っていた事だったりします。
しかしこの作品を読んで、
「やはりあなたは天才です」
と考えを改めました。
ギュッと詰まった1巻完結作品のお手本のような傑作です。
『アイリウム』小出もと貴
1巻通しての完成度がヤバすぎる脳汁出まくりな傑作SF
アイリウム、と呼ばれる「24時間後に24時間分の記憶を失う」という、ちょっと複雑な効能を持つクスリを中心に繰り広げられる物語。
いくつかのお話に分かれていますが、全てのお話はアイリウムによって繋がっています。
そしてこの漫画が面白いのは、
「読者も少しずつアイリウムというクスリについて詳しくなっていき、物語も読者のアイリウムへの理解度に比例して面白くなっていく」
点です。
最初のお話では、僕も最初戸惑いました。
「つまりは、実際に起きていることは記憶が飛んでいるだけなんだけど、本人からしたらタイムワープしたように感じる、のかな?」
ぐらいの理解度。
それが、漫画内で様々な人物が服用するアイリウムの使い方を知っていくうちに
「なるほどこういう使い方もできちゃうわけだ」
と理解していき、その新たな理解に合わせて更に高度な使い方が描かれ——というようにどんどんアイリウムのトリコになっていくのです。
1冊全体通しての完成度でいえば、この『アイリウム』が僕の中ではトップです。
1話毎の内容もすごく面白いのに、最終話にしっかり全てを繋ぎまとめてくるあたり、天才かよ。
小出もと貴先生の精巧で隙のない構成力にただただ感動する大傑作です。
『呪術廻戦0東京都立呪術高等専門学校』芥見下々
予想以上にしっかり終わっていてしっかり面白い骨太バトルアクション
もはや社会現象にまでなった大ヒット漫画、そしてアニメの『呪術廻戦』。
そのプロトタイプとして、『呪術廻戦』本連載前に描かれたのがこの作品です。
一つ勘違いしてほしくないのが、『呪術廻戦』についての知識が一切なくても全然面白い1巻完結作品であるということです。
それどころか、ある意味もうこの作品だけでお腹いっぱい大満足になれるぐらい、読み応えがあり、かつしっかり綺麗にまとまって終わっているのです。
もちろん、『呪術廻戦』の前日譚にもなっているので繋がりも楽しめますが、全く『呪術廻戦』に興味ない方でもバトルアクションが好きなのであればぜひ読んで欲しい傑作1巻完結漫画になっています。
『ききみみ図鑑』宮田紘次
音が飛び出してくるかのような、音にまつわる短編集
34歳という若さで亡くなられた宮田紘次先生の傑作短編集。
9つの物語が収録されているのですが、どの物語も「音」にまつわる物語。
まるで音が漏れ聞こえてくるかのような物語の数々に、きっとあなたの脳内は「漫画なのに音で溢れる」状態になること間違いなし。
原始時代の音の始まりを描いた物語や、音が視えてしまう病気の少年の物語、決められた合言葉の物語などなど、バリエーションに富んだ様々なジャンルの、音が漏れ出してくるような短編が楽しめます。
『マタギ』 矢口高雄
これが阿仁のマタギよ! シブさ全開な狩猟の世界
『釣りキチ三平』などでも知られる矢口高雄先生による、狩猟集団「マタギ」を描いた超ボリュームの傑作。
このマタギシリーズはかなり色々と紆余曲折があり、一度は打ち切りになったりもした作品なのですが、ここでご紹介しているのはシリーズの内容を包括した「総まとめ」のような一冊になっており(マタギシリーズが全て収録されているという意味ではないです)、そのために800ページを超えるボリュームとなっています。
作中では、主に伝説的な狩猟集団である秋田県は阿仁のマタギの狩猟にスポットが当てられており、全てが興味深い内容になっています。
後半ではちょっと雰囲気が変わり、紆余曲折の片鱗を感じるかも知れませんが、それも含めて貴重でパワーの溢れまくった1巻完結漫画になっています。
『永沢君』さくらももこ
ひたすら永沢君の毒舌に腹抱えて笑う作品
え!? ここで??
なんて思うかも知れませんが、やはり人は気楽に笑う事もとても大切。
そんな時には、ぜひさくらももこ先生の作品を思い出して欲しいのです。
気楽に読めて、めっちゃ笑えて、読んだ後スッキリする。
そんな魅力がさくらももこ先生の作品にはあります。
中でも、屈指の人気キャラ(?)である永沢君の中学校での日々を描いた『永沢君』はマジのおすすめ。
あのちびまる子ちゃんに出てきた玉ねぎ頭の永沢君が少しだけ大人に近づいて中学校へ通っている。
藤木くんや野口さんも出てきちゃう!
もう面白い予感しかしませんよね?
『告白』 福本伸行/かわぐちかいじ
雪山に男2人。究極すぎる心理戦に震えるサスペンス傑作
『カイジ』などで有名な福本伸行先生が原作を担当し、漫画を『太陽の黙示録』などで有名なかわぐちかいじ先生が手掛けるという最高に豪華なタッグで作られた傑作。
登場人物は極めて少ないのに、極限状態でのすさまじい心理戦に手に汗ビッチョリになること必至。
サスペンスとはこうやって作るのだ!
とでも言われているかのような、巧みな設定と描写にただただ読者は感動し、ハラハラさせられるのみ。
究極の心理戦を味わいたければ迷わずオススメしたいサバイバル&サスペンスの傑作です。
『スキエンティア』戸田誠二
必ずどこかあたたかい、名手戸田誠二先生のSF短編集
SF短編の名手であり、意外な展開と感動的なラストをいつもしっかり届けてくれるのが戸田誠二先生。
戸田誠二先生の作品の魅力は、ジャンルが何であっても最終的に描いているのは「人間」であるというところです。
この『スキエンティア』でも近未来でSFなアイテムが多数出てきますが、現代と何も変わらない普遍的な「人間」ならではの悩みや幸せが中心に据えられているので、違和感なく自然に世界に入っていくことができます。
どんな世界になっても、僕らが人間であり続ける限り悩みも幸せも、そんなに大きく変わりはしない……。
だからこそ沁みる、SFなのに身近に感じられる不思議な短編の数々が収録されている傑作です。
『世界の合言葉は水 安堂維子里作品集』安堂維子里
水にまつわる、楽しくて幸せな短編集
個人的にかなりツボった作品集。
水にまつわる9つの短編が収録されている1巻完結の作品集なのですが、どの物語も物凄く独創的で読んでいてワクワクするものばかり。
漫画って楽しい! そんなふうに思わせてくれる、本当に自由な発想で描き出された世界が最高に魅力的です。
『春風のスネグラチカ』沙村広明
強く生きるということを学ぶ、極寒の地でのサスペンス&ドラマ
『無限の住人』や芸術的なまでの鬱々とした『ブラッドハーレーの馬車』など実に幅広く変態的な作品を多く残す天才・沙村広明先生が、 「ツンデレっ娘物語を描きましょう」と編集部と話した結果なぜかこうなったロシアを舞台にした壮大な物語。
車椅子の少女と、それに付き従う青年。
その2人の関係性の秘密に、2人が探しているモノ、さらには帝政ロシア時代の遺物とも呼ぶべき様々な事象。
覚悟、勇気、感動、愛情……それら様々な人間の強い部分が詰まった傑作1巻完結漫画です。
歴史に詳しい人はより楽しめるかと思いますし、詳しくなくてもめちゃハマります。
ただしどっしりと腰を据えて読む覚悟は必要です。
『山羊座の友人』乙一・ミヨカワ将
先の読めない展開にぐいぐい引き込まれる学園サスペンスの傑作
マルチな活動をしている乙一先生の原作をミヨカワ将先生が超画力でコミカライズし作品『山羊座の友人』。
まず書いておきますが、この作品は乙一先生の小説原作なだけあって物語の重さといい若干ハードな内容といい、気軽に読める作品ではありません。
しかし、サスペンスの要素が強烈に面白いので読む手は止まらなくなること必至。
主要人物達は皆高校生で、繊細な心の描写も秀逸。
ほんの少しのファンタジーな要素もあり、その匙加減のうまさが面白さを数倍に引き上げています。
最後に全ての謎が解けた時、あなたは何を思うでしょうか?
上質なミステリー・サスペンス映画を見たような気分になれる傑作です。
『未来歳時記 バイオの黙示録』諸星大二郎
ぶっ飛んだ近未来の、これぞ奇才諸星大二郎先生!的なSF短編
奇才・諸星大二郎先生による、恐ろしすぎる教訓だらけなあるかも知れない近未来を描いた1巻完結作品。
遺伝子組み換えが容易になった世界が舞台で、そこでは人の言葉をしゃべるニワトリや、人の形をして生えてくる雑草、自我を持ってしまったロボットカカシなど様々な不思議なモノが存在しています。
世界観の作り込みから、ジワジワと心に染み込み、何かを語りかけてくるようなエピソードの数々。
諸星大二郎先生の魅力がたっぷり詰め込まれた、独特な読後感の傑作です。
『田中雄一作品集まちあわせ』田中雄一
ものすごく気持ち悪いのに、ものすごく面白くてものすごく泣ける
こんなぶっ飛んだ世界観なのにこんな泣ける話ありなの?
と、読み終わった僕はしばらく呆然とした作品『田中雄一作品集 まちあせ』。
全部で4つの独立した物語が収録されているのですが、とにかく全ての物語が濃いです。
で、冒頭で「なるべく万人が楽しめる作品を選んだ」と書きましたが、この作品だけは虫とか猿とかが超濃いタッチで大量に描かれているので苦手な人はダメかも知れません。
しかしぜひそこを乗り越えて読んで欲しい!
圧倒的密度の世界観、そしてリアリティ。
特に表題作の「まちあわせ」は、客観的に見ちゃえば不気味な設定の恋愛話なのですが、あまりにも壮大で神秘的な結末に、きっとあなたも涙を流すと同時に拝みたくなるに違いありません。
全く予備知識無く読んでみて、これほど「アタリだ!」と思えた作品も少ないかも知れません。
なんとか気持ち悪い異生物の絵を乗り越えて読んで欲しい大傑作。
『犬釘を撃て!』伊図透
男たちが国の為にレールを敷設する、鬼シブでかっこいい壮大な作品
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
犬釘を撃て! | 伊図透 | 双葉社 | 2020年 |
大陸を長距離移動する唯一の手段が鉄道――という舞台で、その鉄道を守り修理する男達の戦いとドラマを描いた傑作です。
骨太で感動的なヒューマンドラマだけでなく、鉄道と列車で繰り広げられるハードボイルドなバトルアクションも見どころな読み応えも十分な作品です。
2部構成になっており、1部では主に鉄軌(レール)を敷く作業の過酷さや重要さがよく分かる労働する男達の戦いが。
そして2部では鉄道を巡る政治的思惑なども絡むドラマチックな物語が展開します。
総じて非常に豪華で読み応えがある、シブカッコイイアクション漫画になっています。
『旅する缶コーヒー』マキヒロチ
缶コーヒー片手に読みたい、あたたかくて泣ける短編集
缶コーヒーにまつわる様々な人々の物語を描いた11の短編からなるマキヒロチ先生の作品『旅する缶コーヒー』。
缶コーヒーをよく飲む人もそうでない人も、思い出の中にこっそりと存在していた缶コーヒーの物語を読んでみて欲しいです。
比較的気軽に読む事が出来るにもかかわらず、盛り上げ方が上手いのでほとんどのお話で泣けます。
缶コーヒーを単に飲むだけのものとして描いているわけではないのが面白く、ほんのささいなキーアイテムとして描かれていたりするのも面白いです。
この作品は、リラックスしたい時にでも缶コーヒーとハンカチを準備してゆっくり読んで欲しい、あたたかい気持ちになる缶コーヒーのような作品です。
『雑草たちよ 大志を抱け』池辺葵
池辺先生の空気感が素敵すぎる、深い学園ヒューマンドラマ
学校のクラスの中でも比較的目立たないグループに属する女子3人組の、何気ない日々と恋愛と苦悩の物語。
美人でもずば抜けて頭がいいわけでもないけれど、皆一様に個性的で読み進めるうちに皆の事がきっと大好きになります。
この作品の最大の魅力は、主要人物の独特でいて深い絆を感じる関係性と、作品全体から滲み出ている空気感です。
ああ、こんな関係性って最高だな
と心から思える、仲の良さ。単なる仲の良い関係ではないのです。
まさにそれは「絆」としか言うほかない何か。
そして、この作品には多くの胸に刺さるセリフが出てきます。
それは大人になっているからこそ響くものが多く、ただの「面白い漫画」ではなく、面白いし深く心に残る、不思議な読後感の作品になっています。
これはもう説明も結構難しかったりするので、とにかく読んで浸ってみて欲しいです。
『ネムルバカ』石黒正数
ゆる~い雰囲気と劇的な展開に心震える日常系
『外天楼』の石黒正数先生による、ゆるくて深い日常系1巻完結漫画。
主人公となるのは大学の女子寮で暮らす先輩と後輩の女性で、主にその2人を中心に話は進んでいきます。
特筆すべきはクセのある登場人物たちをも巻き込んで展開される対話が、なんだかいちいち深くって考えさせられる点です。
ゆる~い雰囲気での会話なのに、なんか深い。
そんな不思議な魅力と、劇的に展開していくラストでも驚かされる心に響く傑作です。
特に、なんだかモヤモヤしたまま日々を過ごしている大学生なんかにはきっと刺さるはず。
『夢中さ、きみに。』和山やま
よくわからないけどクセになる、とはこのこと
大きくわけて2人の高校生にスポットを当てた、独特な世界観と間が特徴的な和山やま先生の傑作1巻完結漫画。
なんと言ってもクセのある登場人物達の魅力こそがこの作品のキモであり、そして和山やま先生の他作品にも共通するスゴイトコロでしょう。
本当に独特、なのにものすごい中毒性。
一度読めばあなたもきっと「夢中さ、君に。」状態になること間違いなしです。
『夕凪の街桜の国』こうの史代
忘れてはいけない戦争の記憶。家族の有り様に、涙腺ぶち壊れる
『この世界の片隅に』のこうの史代先生による、戦後の日本を描いた物語。
こうの先生は優しいタッチの絵が素敵で非常に読みやすいのですが、描かれている内容は淡々としている戦後の恐ろしい現実。
作品前半は、原爆投下から10年後の広島が舞台で、あの日の記憶に苦しむ女性が主人公です。
そして作品後半は、平成に入った日本の家族の物語になります。
2つの物語が繋がった時、おそらく様々な想いが沸き起こると同時に涙も止まらなくなると思います。
僕はもう大号泣でした。
原爆という恐ろしい兵器を投下された国日本だからこその知っておかねばならない現実の数々と、家族のとてつもない愛を感じる大傑作です。
『幻怪地帯』伊藤潤二
漫画的面白さに溢れた傑作ホラー漫画
ホラー作品にもたくさん傑作はありますが、現代ホラーの巨匠、伊藤潤二先生の『幻怪地帯』は、怖さ、不気味さ、気持ち悪さなどに加え、漫画としての面白さとユーモアまで盛り込まれた素晴らしい傑作です。
4つの読み切り作品が収録されているのですが、全ての作品が異なるテイストで読み応えもかなりあり、怖いのに読後感も「いいもの読んだ」というとても満足のいく傑作です。
すごく言い現すのが難しいのですが、なんか面白いンです。
映画でもなく小説でもない、その中間のような位置にある漫画だからこその、想像力を掻き立てる面白さがある。
ホラー漫画が苦手な人も、改めてホラー漫画をちょっとこの作品からでもいいから見つめなおして欲しいな、と思うそんな作品です。
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』 押見修造
たぶん、読む人によって全く感想が異なるのではないかと思える作品
映画化もされた押見修造先生の大傑作1巻完結作品。
吃音症に悩まされている少女の、葛藤と友情、そして成長を描いた作品で、ものすごく泣けます。
さらに、感動要素とは全く別の、読ませる魅力のようなナニカが詰まっている不思議なパワーを持った作品でもあります。
内容の説明も難しい作品なので、試し読みをまずしてみてほしいです。
『闘茶大名 利休七哲』工藤かずや/西崎泰正
茶仙の苦悩がものすごくわかりやすく、そして面白く描かれている歴史作品
歴史が好きな方なら誰もが知っているであろうワビサビの生みの親、千利休。
その利休を師と仰ぎ、利休七哲と呼ばれた戦国武将達の茶器と茶にまつわる物語集です。
利休〇哲というのは様々なパターンがあるのですが、この作品では荒木村重、山上宗二、蒲生氏郷、古田織部、織田有楽、高山右近、そしてサブタイトルにはなっていませんが細川忠興のこと。
茶道についての諸々から、茶の湯を愛したがゆえの苦悩など、全く知らなかった利休を取り巻く有象無象がわかり、勉強になるのと同時に大いに感動な物語が展開します。
最後まで読み終えた時、きっとあなたはすぐにwikiを見たくなること間違いなしです。
読まなきゃもったいないレベルの1巻完結・読み切り漫画はとにかく読むべし!
読まなきゃもったいないレベルの1巻完結漫画と読み切り漫画の数々、気になる作品はあったでしょうか?
どれも超面白いのは間違いないですが、それぞれジャンルもカラーも違うので、あなたの今の気分に合うものを選びチェックしてみてもらえればと思います。
そして、どの作品を読んだ時も「短い中にまとめている漫画家さんの凄さ」という点もちょっとだけ意識しながら読んでみて欲しいです。
そうすることで、より漫画家さんそれぞれの個性や上手い部分などが見えるようになってくるはずです。
読まなきゃもったいないレベルの漫画ばかり紹介したつもりなので、気になったのであればひとまず試し読みだけでもしてみる事をおすすめします。
あなたが運命の一冊に出会える事を陰ながら願っております。
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