誰もが一度は読み聞きしたことがあるであろう物語『グリム童話』。
そのグリム童話を、かつてこのブログでも紹介した『バイオの黙示録』や、『妖怪ハンター』などの奇才・諸星大二郎先生が独自に解釈するとどうなるか?
――そんなもの、面白くって奇妙で不気味で読むのが止まらなくなるに決まっているのです。
というわけで今回は、諸星大二郎先生による『スノウホワイト』をご紹介。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
スノウホワイト | 諸星大二郎 | 東京創元社 | 2006年 |
『スノウホワイト』を読んだら……
奇妙な諸星大二郎ワールドに引き込まれ、全く異なる新しいグリム童話が体験できます。
『スノウホワイト』はどんな漫画?
『スノウホワイト』は、「白雪姫」や「赤ずきん」など、数多くの有名な童話が収められている「グリム童話集」に収録されている作品を、諸星大二郎先生が独自解釈で描き直した不思議で奇妙な短編集です。
全部で12作品収録されており、巻末には全ての作品への解説を諸星大二郎先生自らしてくれています。
そもそものグリム童話が奇妙で不思議な話ばかりなのに、そこに諸星大二郎先生が加わったらもうそれ常人に理解できるの? と不安になりますが、大丈夫しっかり面白いです。
ここでは、それぞれどんな内容の作品が収録されているのか、簡単にざっくり紹介しますので、読もうか悩んでいる方は参考にして頂ければと思います。
七匹の子やぎ
「オオカミと七匹の子ヤギ」がモチーフとなっているお話。
SFチックな舞台へと変更された世界観で、不気味なお話が展開していきます。
最初のお話として最高の惹き込み具合を持ったこわいお話。
奇妙なおよばれ
血入りソーセージがレバーソーセージを家に招き、レバーソーセージが招かれた家で様々な変なものを目撃するお話。
グリム童話でも同名のタイトルで収録されているようですが、どちらにしてもとても奇妙で難解なお話。
ただちょっとだけソーセージ食べたくなります。
漁師とおかみさんの話
「漁師とおかみ」の名でグリム童話に収録されている作品。
諸星大二郎先生は、おかみさんの際限のない欲望をヒラメが叶えてくれる――として描いた作品にしており、グリム童話的で面白いです。
終わり方もいかにも教訓めいていて好き。
スノウホワイト
ご存知「白雪姫」をモチーフにしたお話。
諸星大二郎先生自らの解説にも書いていあるのですが、グリム童話の中でもいくつかバリエーションがあるようで、どれをとっても結構ホラーなんだそう。
では諸星大二郎先生はどんな白雪姫にしたのか?
小ねずみと小鳥と焼きソーセージ
「はつかねずみと小鳥と腸づめの話」をモチーフにしたお話。
それぞれ巧いバランスを保って暮らしていた子ネズミと小鳥と焼きソーセージが、ちょっと担当する仕事を変えてみよう、と試みたところバランスが崩れ色々と不幸が起きていくこわいお話。
諸星先生はベンチャー企業として描いているのも面白いです。
ラプンツェル
ディズニー映画でも扱われてるラプンツェルを諸星先生はSFアレンジ。
なんとも深くて面白いお話に仕上がっています。
コルベス様
グリム童話の中でも一方的な暴力という意味で結構怖いお話である「コルベスさま」。
諸星先生版でも、かなり理不尽な殺され方をするコルベス様が描かれており、結構怖いです。
巻末の解説と合わせて読んでみて欲しいです。
めんどりはなぜ死んだか
「めんどりの死んだ話」としてグリム童話に収録されている作品。
諸星先生は、かなり難解で頭がこんがらがりそうな法廷ミステリー風にえがいており楽しいです。
カラバ侯爵
「長靴をはいた猫」モチーフのお話。
諸星先生も解説に書いていますが、これだけはグリム童話ではなく「ペロー童話集」のお話。
結構怖いお話。
藁と炭とそら豆
「わらと炭とそら豆」がモチーフのお話。
グリム童話では、そら豆の黒い部分が出来た由来を面白おかしく説明するような内容になっているのですが、諸星先生はさらに愛憎劇とサスペンスを盛り込んで描いています。
とりかえっ子の話
子供をこっそりと違う子供に取り換えられてしまう話がモチーフの、ゾッとするようなお話。
諸星先生はかなり壮大でロマン溢れる不思議な話へと昇華してくれています。
金の鍵
グリム童話の最後に初版以降はずっと配置される最後の物語。
諸星先生はオリジナルの要素として漫画家がアイデアを絞り出す為に金の鍵と鉄の箱を見つけるという設定に変えて描いています。
『スノウホワイト』を読んだ皆さんの反応
『スノウホワイト』は諸星大二郎先生版グリム童話とも言うべきおすすめの1巻完結奇作短編集
いかがでしたでしょうか?
諸星大二郎先生が解釈するグリム童話、実にバラエティに富んでいて面白かったです。
ちょっと不気味でゾッとするような内容から、思わず唸ってしまうような考えさせられるものまで、読み応え十分の作品でした。
改めてグリム童話集も読んでみたくなりますね。
ぜひあなたも、諸星大二郎先生が描く奇妙奇天烈なグリム童話の世界、読んでみてください。
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