サバサバした会話に、淡々とした描写。
それでいてしっかりと感じる絆や友情、そして恋心。
女性にとっては心に響き、男性にとっては衝撃を受けるかもしれない短編の数々。
今回ご紹介する『さよならガールフレンド』は、高野雀先生の初の単行本化された短編集で、鋭い視点で様々な女性のリアルな心情や友情が描かれている、心にチクチク刺さる1巻完結の読み切り短編集になっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
さよならガールフレンド | 高野雀 | 祥伝社 | 2015年 |
以前このブログでは、今回ご紹介する作品の作者、高野雀先生の『あたらしいひふ』を紹介しました。
『あたらしいひふ』は、衣服を通しての女性ならではの葛藤や悩みなどを描いた漫画で、リアルな視点からの描写が非常に面白く描かれていました。
『あたらしいひふ』に比べて、『さよならガールフレンド』はより尖っているように感じますし、だからこそ人によってはめちゃ深く刺さる、そんな作品になっています。
『さよならガールフレンド』を読んだら……
空気感が最高な珠玉の短編が堪能できます。
『さよならガールフレンド』はどんな漫画?
『さよならガールフレンド』は、高野雀先生初の単行本となる短編集です。
全部で6つの短編が収録されており、それぞれが独立した物語になっています。
どのお話も独特のテンポと空気感で描かれ、淡々としている描写です。
そして淡々としている中に秘めた鋭い視点が、時に心をえぐり、時に大きく心を勇気づけてくれます。
――ここでは、簡単にざっくりと、ネタバレしない程度に各話紹介してみるので、読もうか迷っている方は参考にしていただければと思います。
さよならガールフレンド
最初のお話が表題作の「さよならガールフレンド」です。
田舎の高校に通う主人公の女の子の、出会いと別れの物語になっています。
キーとなる登場人物が、金髪ヤンキー風の先輩「ビッチ先輩」。
この2人の会話がすごく良いです。
男子高校生への認識も、読んでいて僕自身「その通り」と大納得の鋭さ。
大きな起伏があるお話ではないのですが、おそらくは読む人次第で色々な感想を持てるであろう不思議であたたかい(時に冷たい)お話。
※余談ですが、お話が終わってからのオマケの1コマみたいなのが地味に面白くて好きです。
面影サンセット
なぁなぁで付き合い続けているカップルのお話。
なんかもう、リアル過ぎてゾッとするレベル。
高野先生が好きそうなポエミーメガネな男性が出てきますが、すごく好きです。
わたしのニュータウン
女同士の回顧譚。
実家がなくなってしまったり、親友が結婚することになって北海道へ引っ越すことになってしまったり、変わっていくものと変わらないものの物語。
親友同士の空気感がとても素敵なお話。
ギャラクシー邂逅
高野先生自ら、あとがきにて「ポエミーになりすぎた」と書いていましたが、僕としてはすごく好きなお話。
ポエミー成分排除して端的に書けば、異性の同僚との電車通勤で一緒の車両に乗っちゃうお話。
そこへギャラクシー成分とメテオライトとリアルな電車を混ぜこんだお話。
まぼろしチアノーゼ
地味な女であると自覚している主人公の女性と、きらびやかな装いと美しい容姿を持つ姉。
男運もなく、身体目的の相手にしかされない主人公女性の悲しさに溢れた日々。
しかし姉と一緒に過ごした時間の中で自分の勘違いに気付き、前向きになっていく。
――そんな、淡々としていながらも救われるお話。
冷たい手、腫れた瞼、まぼろしチアノーゼ。
タイトルからも想像力を掻き立てられる、素敵なお話。
エイリアン/サマー
突然クラスメイトの女の子が家に居候することになる、男子高校生のお話。
恋心でもなく友情でもない、甘酸っぱくて青い、青春なお話。
タイトルがまた良いです。
『さよならガールフレンド』を読んだ皆さんの反応
『さよならガールフレンド』は淡々と描かれるリアルな女心と独特の空気感の、刺さる人には超深く刺さるであろうおすすめ読み切り短編集
僕個人的には一番まぼろしチアノーゼが面白かったな、と思います。
いや、どれも素晴らしいのですが、巧さが際立っていたような。
収録されているお話それぞれが異なる読後感のお話なので、読みごたえも十分。
おしゃれなフランス映画でも観たかのような感覚にもなりました。
そしておそらくは、男性よりも女性に刺さる漫画なのだろうなと思います。ジャンルで言えば女性マンガですし。
ただ、僕のこのブログでは「少年マンガ」とか「少女マンガ」でのタグ分けやカテゴリ分けはしていません。
だって男性も少女漫画読んでキュンキュンしたり泣いたりするし、女性も少年漫画読んでワクワクドキドキするわけで。
逆にこの『さよならガールフレンド』を男性が読んだら、より女性の心を知るきっかけにはなるかも知れません。
独特な空気感の高野雀先生の世界、気になった方は試し読みだけでもしてみてください。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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