セリフは少なめで、ひたすらに表情や間で読ませる作品っていつ出逢っても「すごいなぁ」と思います。
人間の物語でも難しいことなのに、猫でもそれが出来、なおかつ泣かせるとか天才の所業。
というわけで、日常の何気ない風景から非日常の一瞬までを淡々とした描写と空気感で魅せる傑作短編集『休日ジャンクション』を今回はご紹介いたします。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
休日ジャンクション | 真造圭伍 | 小学館 | 2016年 |
作者は映画化もされた『森山中教習所』や『ノラと雑草』の真造圭伍先生。
独特の視点、生活感、そして空気感を堪能して欲しい1巻完結の傑作短編集です。
『休日ジャンクション』を読んだら……
生活感と空気感がたまらない、センスの光る短編を楽しめます。
『休日ジャンクション』はどんな漫画?
『休日ジャンクション』は全部で7つの読み切り短編漫画が収録された短編集となっています。
ここでは簡単にネタバレし過ぎぬよう各話ざっくりと紹介してみますので、読もうか迷っている方は参考にしていただければと思います。
一時話題になった「家猫ぶんちゃんの一年」は最後に収録されています。
休日
久々に会う友人同士のお話。
特に起伏もなく淡々と描かれているのですが、「久々に会う友人」というシチュエーションとその関係性とが凄くよく伝わる、かなり好きなお話。
細かなセリフや表情にも友人との関係性が滲み出ていてじわじわ来ます。
兄と妹
最初のお話は友人でしたが、このお話はそのまま兄と妹のお話。
妹から見て「いたってフツーの兄」と、気晴らしにとジムへと行く事になる妹。
このお話も空気感と表情などから、兄と妹の関係性が鋭く描写されていてとても面白く、ほっこりも出来ます。
以前紹介した1巻完結漫画『ことも・おとな』では兄と弟の関係性が鋭く描かれていたエピソードがありましたが、兄と妹だとまたちょっと違う雰囲気なのが面白いです。
美少女なんて大嫌い
主人公のおじさんが、小学5年生の女の子とひょんな事から(←便利な言葉)ライブを見に行くデートをすることになる、なんとも背徳感漂うお話。
僕なんかはどうしてもおじさん(お兄さん)寄りの気持ちで読んでしまうわけで、トータルで理想と現実とを疑似体験できる不思議な読後感のお話でした。
最後の女の子の表情が最高。
ゴジラカップル
ゴジラをテーマにどんな話?
とワクワク読み始めたらまさかのゴジラとセックスのお話。
いやほんとに。
つりぼり松田さん
釣り堀の管理人のおじさんと、失恋した少女とのお話。
占いに影響される感じ、勇気を出すおじさんの感じ、全てがハラハラヒリヒリする良いお話。
また、来ます。
からの最後の一文が沁みました。
がんばれよういち
トライアスロンを頑張る子供と、その子供を育てて来た両親とのお話。
子供の心の内が凄く伝わる描写で、このお話は決して「感動のスポーツ漫画」にはなっておらず「スポーツを諦める漫画」になっているのがとても珍しく、素晴らしいところ。
登場人物皆の表情を細かく読んで欲しい、とても繊細で美しいお話。
家猫ぶんちゃんの一年
飼い主のおっさんと、飼い猫ぶんちゃんとのとても泣けるお話。
セリフは途中からほぼなくなるのですが、猫のぶんちゃんの表情だけでひたすらに読ませるスゴイ作品になっています。
猫好き、または猫を飼っている人にとっては戒めのような作品にもなりますし、心にぶっ刺さる作品になるかと思います。
衝撃的で美しい傑作。
『休日ジャンクション』を読んだ皆さんの反応
『休日ジャンクション』は生活感と空気感がたまらないおすすめ傑作短編集
話題性と感動度合いから、猫のぶんちゃんに目が行きがちですがその他の作品も本当に素晴らしいです。
特に、トライアスロンのお話は結構心に来ましたし、お子さんがいる方には余計に響くかも知れません。
総じてテキスト量はそんなに多くないお話が多いので、ゆっくりと時間を掛けて、しっかり絵と人物の表情で雰囲気と空気感を味わって欲しい短編集になっています。
もちろん、ぶんちゃんのお話はめちゃヤバイです。
繰り返し読んでほしいですし、ハンカチは必須です。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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