読み切り短編でありながら、意外な展開と感動のオチをしっかりと詰め込んでくる、まさに短編の名手と言うべき漫画家の戸田誠二先生。
超おすすめ10選にも、戸田誠二先生の短編集『スキエンティア』を選ばせて頂きました。
他にこのブログで紹介してきた作品では、短編の名手と言えばファンタジー系を描かせたらべらぼうに巧い九井諒子先生がいらっしゃいます。
一方で、九井先生とは若干カラーが異なり、より「生きる事」や「人間そのもの」を描いた作風が特徴的なのが戸田誠二先生です。
今回ご紹介するのは、戸田誠二先生がwebにて公開していた短編を初めて単行本化してまとめた作品『生きるススメ』です。
1ページしかない超短編(掌編とも)も沢山収録されており、「1ページなのに深くて考えさせられる」というまさに職人技としか言いようがない戸田先生の天才的な造りの作品が詰まっているので是非読んでみて欲しいです。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
生きるススメ | 戸田誠二 | 宙出版 | 2003年 |
『生きるススメ』を読んだら……
生きる活力が湧いてきます。ほんとうに。
『生きるススメ』はどんな漫画?
過去に当ブログで紹介してきた戸田先生の作品は、どれもこの『生きるススメ』よりも後の作品で(単行本化の順番で言えば)、ある意味でこの作品が最初期の戸田先生の原点を知れる作品とも言えます。
この短編集は、最初に1つ短編があり、その後4章に分かれての構成になっています。
それぞれの章ごとに、簡単に紹介してみますので参考にしてみて下さい。
メイキングワールド
最初を飾る、カラーの短い作品でインパクトのある裸の女性の表紙絵はこのお話から。
引きこもり続けた女性が、部屋を出るきっかけを得るお話。
誰にも世話にならずに生きていけるわけもなく、またここまで生きて来られたのも自分一人の力ではないのです。
深いです。
第一章・まるで花が咲くように
全10編の短編から構成された章で、全ての短編はつながりのお話です。
病気の話、死の話、結婚の話、子供の話などの非常に身近でリアリティを感じる短編が詰まっています。
戸田誠二先生の作品の素敵な部分って、僕は読んだ後に少しだけ前向きになれるようなお話が多い点だと思っています。
扱っている題材がデリケートなものであったり、普通ネガティブなイメージを抱くようなものであったとしても、読んだ後は少しだけ前を向いて生きていこうと思える――そんな印象。
故に戸田先生の作品は読んで嫌な気分になることがなく、誰にでもオススメできるのです。
第二章・1Pほどの毎日
11の1ページしかない超短編と、2つの2ページしかない短編とで構成された章です。
まさに戸田誠二先生の真骨頂とも言うべき、超短いのに何だか考えさせられる作品ばかり。
特に「人生」というタイトルが付けられたタマネギのお話は必読です。
第三章・夜を抜けるために
少しだけ(本当に少しだけ)重めなテーマな短編で構成された第三章。
特に「登校拒否」というタイトルの短編は、先生が生徒達に登校拒否をしている生徒に対して「どうすればいいか考えろ」と提案するのですが、生徒側から「先生が話に行けばいいと思う」と諭され、さらにラストに意外なオチもついて心にクる良いお話。
第四章・ラスト・ムービー
人生の最期の瞬間を映写室のような場所で振り返るお話。
ガイドしてくれているのが主人公のイメージから作られた黒い犬なのですが、人生を振り返る中で「あの時彼女はなんであんなことを言ったんだ?」といった細かな疑問にもその黒い犬が全て答えてくれます。
理不尽だと思っていた出来事にも、しっかりとした事情があったことなどを知っていく主人公の男性は、最後に別居することになった妻との思い出を振り返り、そこでも意外な事実を知る事になります。
――最後を飾るに相応しい、人生の最期の瞬間を劇的に切り取った、じんわりと泣ける素敵なお話。
『生きるススメ』を読んだ皆さんの反応
『生きるススメ』は超ショート漫画の天才、戸田誠二先生の傑作短編集
この『生きるススメ』のあとがきに、webマンガを単行本化しないか、と持ち掛けられた経緯が漫画にされているのですが、それはもう必然的だったと思います。
多くの人に読まれるべき作品ですし、この『生きるススメ』以外にも戸田先生の作品は本当に素晴らしい作品ばかりです。
もしまだ戸田誠二先生の作品を何も読んだことが無いと言う方、もったいないですからせひ読んでみてほしいと思います。
扱っているテーマが人間であれば共感できるような内容なものが多いので、間違いなく心に響くはずです。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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