モヤモヤした時は 月面を思い浮かべて そこに思いっきり 道路標識を放り投げるんです
――そんな不思議な事を言い出す可愛らしい女性がバイト先にいたら、あなたならどうしますか?
今回ご紹介するのは、『月刊アフタヌーン』にて『盤上兄弟』でデビューした熊倉献(くまくらこん)先生の読み切り短編集、『春と盆暗』です。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
『春と盆暗』 | 熊倉献 | 講談社 | 2017年 |
正直に書いておきますが、空気感と独特な感性を持った登場人物が多いので、そういうのが苦手な人はイヤかも知れません。
僕は不思議な登場人物達がとても魅力的に思えたので最高に楽しめましたし、冒頭で書いたようなセリフを言っちゃう女の子、僕は最高に好きです。
『春と盆暗』を読んだら……
独特なセリフ回しと世界観が素敵で、不思議な気持ちになれます。
『春と盆暗』はどんな漫画?
『春と盆暗』は、4つの異なる読み切り恋愛譚から構成されています。
どのお話もとても独特な感性の登場人物が出てくる、ちょっと不思議で甘酸っぱい恋愛の物語を読むことができます。
それぞれのお話をざっくりとネタバレし過ぎぬよう紹介してみますので、参考にしてみてください。
月面と眼窩
アルバイト探しをしている少年ゴトウ君と、働くことになったバイト先にいたちょっと不思議な女性サヤマさんとの物語。
タイトルがもうちょっとよくわからない事からわかるように、サヤマさんはかなり変わった感性を持っている人。
笑顔で誰にでも接しているように見えて、独特の発散方法と妄想でストレスを回避している不思議ちゃん。
ゴトウ君はそんなサヤマさんがちょっとだけ気になっていて……。
――サヤマさんの独特な感性を「かわいい」と思えるかどうかがこのお話のキモでしょう。
僕はめっちゃ好きな雰囲気なので、最後までキュンキュンしながら読めました。
ただ見方によってはヤベェヤツ。
水中都市と中央線
カラオケ店にいつも違う男の人と来店する制服姿の女の子。
そしてそのカラオケ店の店員の少年の物語。
これまた雰囲気重視のとても面白い作品です。
制服姿の女の子は、いつもカラオケ店での名前記入の際に「中央線の駅名」を書きます。
そして、2人を繋ぐキーワードの1つが「水中」。
読まないとその関連性はわからないのですが、抽象的な描写の多い不思議で美しいお話。
仙人掌使いの弟子
おじいちゃんの家に泊まりに行くことになった中学生のススム君と、久々に逢ったはとこのさわ姉ちゃんとの物語。
このお話では、やはりぶっ飛び感性の持ち主がいてそれがはとこのさわ姉ちゃんになっています。
この物語は恋愛というよりもススム少年の成長譚になっています。
タイトルに出てくる仙人掌(サボテン)も、ちゃんと物語の重要なアイテムとなるのも練られていてスゴイです。
キュンというよりは、心温まるお話。
甘党たちの荒野
妄想力がものすごく高い主人公のホシノ。
ある日友人とクリームパンを買う為に並んでいた行列で、独特な感性を持つ大友さんという女性と出会います。
大友さんは、あるお店のケーキが大好きで、そのケーキをより詳しく知る為に「巻き戻せませんかね?」とホシノに相談します。
そうしてケーキを「巻き戻す」為に、2人の甘いものライフが始まる――みたいなお話。
やはりスペシャル感性枠の大友さんはとてもぶっ飛んでいるのですが、感情表現が出来ずに殴っちゃったりするのがものすごく可愛いです。
甘党と書いて甘党とされてしまったホシノと大友さんの恋の行方は?
妄想と勢いが良くてかなり面白く読めました。
ラストカットも素敵!
因みに、このお話のあとにもう1つだけおまけのお話が収録されています。それは読めば繋がる、この短編集のとあるお話と関係してくるショートストーリーでした。
『春と盆暗』を読んだ皆さんの反応
妄想過多女子! なるほど。
さわ姉ちゃんがめっちゃいいキャラですからね。
『春と盆暗』独特な空気感と登場人物の世界観に浸り、不思議な甘酸っぱさの恋をご覧あれ
時に想像力は助けになります。
僕もこれからツライ事が起きたら、月面に道路標識ぶん投げるか、東京が水中都市になっちゃう妄想でもして心を楽にしてみようかな、なんて思いました。
この『春と盆暗』は、読後感が温かくて力を入れて読む必要もないタイプの漫画なので、ぜひストレス溜まっているような時や疲れている時にこそ読んで、ふぅぅ、って力を抜いて欲しいと思います。
試し読みだけでもその空気感を少し触れられますので、ぜひチェックしてみてください。
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