茶道と聞いてまず名前が思い浮かぶのが、多くの人は千利休なのではないか? と思います。
わび茶を追い求め、多くの武将や大名を魅にし、ついには政治の場にまで影響を及ぼす程になった千利休。
しかし力を持ちすぎてしまった結果、時の太閤豊臣秀吉と不仲になり、最後には切腹させられてしまうという最期を遂げます。
そんな超有名でありながら悲惨な最期を遂げる千利休と、「利休七哲」と呼ばれた利休の高弟7人との物語が1巻完結漫画で読めるとしたら、最高だと思いませんか?
歴史好きでなければワクワクはしないかも知れませんが、僕は飛びつき、そして感動しました。
面白い! そして利休を取り巻いていた様々な情勢もよくわかる!
戦国時代好きや、千利休は知っているけれど詳しくは知らない、というような方には文句なしでおすすめできる茶器と七哲と利休の物語『闘茶大名 利休七哲』をご紹介します。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
闘茶大名 利休七哲 | シナリオ:工藤かずや 漫画:西崎泰正 | リイド社 | 2013年 |
余談ですが、利休七哲と呼ばれる7人は、書物によって違う人物であったり入れ替わっていたりと「絶対これ」という7人が定まっていません。今後ももしかしたら新たに発見される書物などでその7人も変わる可能性もありますがれそれは歴史の宿命。その点だけはご了承ください。どういうこと? と思う方はwikiもご覧ください⇒利休七哲
『闘茶大名 利休七哲』を読んだら……
千利休の茶道の弟子たちの熱い物語が堪能できます。
『闘茶大名 利休七哲』はどんな漫画?
『闘茶大名 利休七哲』は戦国時代で名を馳せた茶人、千利休を中心とした物語です。
全部で8話の構成になっていて、それぞれ異なる人物の茶器と茶道の物語が描かれています。
ここでは、ざっくりと簡単に、それぞれのお話の紹介をしますので、読もうか迷っている方は参考にしていただければと思います。
第1話:荒木高麗と茶人の生涯
信長に謀反疑いを掛けられて殺されそうになり、逃げに逃げて荒木道薫と名を改めて出家した、荒木村重のお話。
最近このブログで紹介している漫画によく登場するので、なんだか縁を感じます。
※『戦国謀略図』とか、『漫画でわかる武士道』に登場しました。
荒木村重は後に「利休十哲」に数えられますが、「利休七哲」には入ったり入らなかったりしています。
漫画内では、オリジナル解釈もあるのでしょうが、荒木村重の恐ろしいまでの茶器への執着が面白く、最後にはちょっと泣けるエピソードでした。
荒木村重は個人的に人間臭くてなんだか好きな武将です。
第2話:山上宗二の嘆き 侘茶心得
堺の豪商でもあり、利休には20年以上も学んだ山上宗二(やまのうえそうじ)の物語。
茶の湯(茶道)の考え方って、利休の追求した「侘茶」とかを小説や漫画などで読む限りはかなり曖昧で思想的だと思うのです。
となると、その解釈も人によって違ってきたり、時には利休が秀吉に重用される様を見て「それは本来の茶の湯の道から外れている」と思う者が出て来ても仕方ないと思うのです。
お互い深い絆がありながらも、離れて行ってしまった利休と宗二のなんともやるせない物語になっています。
第3話:大徳寺の木像と利休の運命
1話、2話と読んできて、読者もうっすらと「秀吉と利休の関係性は良くない」事を理解してきていると思います。
そしてこの3話で、有名な大徳寺の木像の事件と、利休の死が描かれます。
利休が切腹するにあたり、それを止めようとする高弟達との会話がアツく、泣けます。
このエピソードの最後に秀吉がつぶやくセリフも、なんだか沁みます。
見栄と思惑とが幾重にも交錯していた、嫌な時代です。
第4話:蒲生氏郷 最期の意地
利休の死後、なんとか千利休の親族に千家を再興させようと頑張る蒲生氏郷の物語。
氏郷は病気で命が長くないことを自覚しており、それ故に利休の死後間もないのに秀吉に千家復興の為にあれこれと策を巡らせます。
丁度本能寺の変後の、秀吉が天下を獲り家康がスキを伺っている時代だからこその駆け引きの面白さがあり、この物語では家康がキーマンになってきます。
千家復興が許されるという奇跡が起きた時、氏郷は何を想うのか……。
第5話:古田織部 貫きし矜持
利休七哲の中でも一番の変わり者「へうげもの」であった古田織部の、自分の信念と利休との約束を貫く、へうげものならではの苦悩と覚悟の物語。
先にも触れたように、茶の湯の道が曖昧とし、漠然とした思想のようなものであったからこそ生まれてしまった軋轢などは読んでいて心苦しいです。
変人扱いされ、そんなの茶の湯じゃないとまで言われ、それでも信念を貫いた古田織部が、後に家康に重用され千利休の後継者となったのはなんともムネアツなお話。
第6話:織田有楽 戦国を生き抜きし魂
織田信長の弟でもあった織田有楽の波乱万丈としか言いようがないほどの、凄まじい半生と茶の湯とを描いた物語。
本能寺の変直後の逃避行から物語は始まり、秀吉の御伽衆となり、利休と出会い、利休が死に、大坂の陣での仲介役にされ、晩年は茶の湯に専念し生涯を終えました。
死のタイミングは多数あったにも関わらず生き延びていた有楽に周囲は「卑怯者」など様々な罵声を浴びせましたが、「なぜ生きようとすることがいけないのか?」と考える有楽は、異常であった戦国の世において一番まっとうな考えを持つ人物であったとも言える気がしました。
第7話:高山右近 武と茶と信仰の果て
利休七哲の一人であり、キリシタン大名としても有名な高山右近の物語。
茶を想う心、キリシタン信仰、武人としてのプライド。
様々なものを抱えながら、最後まで信仰を貫いた、なんとも深く、考えさせられるお話です。
終章:千宗旦
これで終わりと思いきや、最後に千利休の孫である千宗旦の物語が収録されています。
宗旦は、原点回帰とも言うべきわび茶の精神を持っており、かつて利休や多くの武将達が辿ったような権力に塗れたり飾ったりする事を嫌いました。
そして次男に武者小路千家を、三男に表千家を、四男には裏千家を開かせ、現代にまで続くいわゆる「三千家」として茶道を伝えています。
※宗旦の長男は勘当し家出した為茶道には関係していません。
『闘茶大名 利休七哲』を読んだ皆さんの反応
『闘茶大名 利休七哲』は千利休の弟子と茶器の行方を描いた哀しき物語
『闘茶大名 利休七哲』、結構本気でおすすめです。
かなり上手くまとめてありますし、もちろん創作されているであろう描写も多いですが割としっくりきます。
千利休の事は知っていても、最後を知らない人って結構いるような気がします。
そんな方にはぜひ読んで欲しいですし、茶器と茶道がありえない程に価値を持っていた時代背景も調べつつ読むとより楽しめるかと思います。
千利休と利休七哲の、茶の湯と茶器と武将としての意地。
それらが丁寧にわかりやすく描かれている、上質な1巻完結のおすすめ読み切り戦国漫画になっています。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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