その家の主が愛情を込めて作り上げたその家だけの特別な空間、それが「庭」です。
昨今の日本では一軒家に住む方が減ってきており、そもそも庭付きの家に住んでいる方の人口自体が減っているとも聞きます。
逆に、だからこそ昔実家にあった庭であったり、お婆ちゃんの家、おじいちゃんの家にあった庭への懐かしい気持ちというのが強くなっているようにも思います。
僕の実家では、おじいちゃんが趣味で盆栽をいくつか育て飾っていました。
雑草だらけの庭ではありましたが、緑に溢れた思い出の庭です。
今回ご紹介するのは、そんな「庭」で紡がれる素敵で不思議な物語を描いた短編集『にわにはににん』です。
説明を極力省いた、空気感や雰囲気で読ませるタイプの漫画なので、素敵な庭に招待されたような気持ちで気軽に読んでみて欲しい、優しい一冊になっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
にわにはににん | 中野シズカ | KADOKAWA | 2018年 |
『にわにはににん』を読んだら……
庭にまつわる不思議で素敵なたくさんの物語に出会え、改めて庭の良さに気付けました。
『にわにはににん』はどんな漫画?
『にわにはににん』は、全部で7つの短編が収録された、1巻完結の読み切り短編集漫画になっています。
全てのお話が庭をモチーフにしており、ファンタジー要素もある不思議な庭の物語が詰まっています。
ここでは各話ネタバレしないよう、ざっくりと簡単に内容紹介しますので、読もうか迷っている方は参考にしていただければと思います。
Prologue 庭師の仕事
セリフの一切ない、庭師が庭を作り上げる工程を描いたお話。
単に庭を作り上げるだけでなく、松の木や枯山水の砂はうごめき、庭師を襲います。
不思議な魅力に満ちた躍動感溢れる庭師のお仕事が読めます。
水槽屋敷
家が火事になり、入院している少年の「水の玉」と庭、そして火事で消えてしまった母親の物語。
不思議な水の玉が起こす現象と、大掃除は読んでいて清々しいお話。
ユーレカの庭
学生の少女が見つけた「一瞬見える不思議な庭」の物語。
言葉で説明しにくいのですが、若い頃に感じていた「特別な場所感」とか、「一瞬見えた秘密の場所感」などを上手く描写しているお話だな、と感じました。
通学バスに乗っている時、一瞬だけ見える「あの庭」へなんとか辿り着こうと奮闘する少女の想いに、不思議と懐かしさを感じました。
因みにタイトルの「ユーレカの庭」のユーレカは、「エウレカ」や「ヘウレーカ」とも言われる古代ギリシャの哲学者アルキメデスに由来する「見つけたぞ!」などの意味の言葉です。
以前このブログでも紹介した「ヘウレーカ」と一緒ですね。
ワタシのお庭
何かものすごく重いものを抱えている女性の自分だけの庭のお話。
庭がくれるものは束の間のリラックスだけではなく、人によっては深い安息にもなり、また身を亡ぼすきっかけにもなるのです。
にわにはににん
庭には2人――という意味でしょうか?
表題作となるお話で、前編・後編に分かれています。
和風な一軒家の庭で起こる、不思議で因縁深い物語です。
和風な一軒家の庭って、物凄く素敵である反面、怖さも持っていると思うのです。
その雰囲気も現れていたように感じました。
庭師の休日
庭師が久々のお休みで家でゆっくりしようと思っていた矢先、子供が突然訪ねて来てしまうお話。
もちろん、庭師のおうちに訪ねてくる謎の子供がただの子供のはずがなく……。
透明なお菓子や水の表現など、美しい絵満載の素敵なお話です。
Epilogue 庭かるね
お庭のお部屋でママが手帖(カルネ)に書いていたのは、家族との素敵な出来事のみ。
綺麗に終わるまさにエピローグ。
『にわにはににん』を読んだ皆さんの反応
『にわにはににん』は美しくも懐かしい庭で紡がれる不思議な物語が詰まった短編集
庭をテーマにこれだけ素敵な物語を作れるというのが本当にすごいです。
たしかに日頃庭について思いを巡らすことはあまりないと思うのですが、考えてみると庭ってとても不思議な空間です。
物凄くパーソナルな空間でもあるし、時に世界中に見て欲しい空間であったりもする。
ご自宅に庭がない方も、記憶の中の庭を思い出しながら浸ってみてほしい、不思議な庭がモチーフの漫画になっています。
リラックスしたい時にもどうぞ。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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