『なんてことないふつうの夜に』――というタイトルでありながら、ふつうじゃない人物達が多く登場し、クスっと笑えたり不思議な展開になったり、嶽まいこ(だけまいこ)先生のジワジワと面白い傑作短編集を今回がご紹介します。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
なんてことないふつうの夜に | 嶽まいこ | 祥伝社 | 2016年 |
どの物語も、大きく感情を揺さぶられるようなお話ではないのですが、とても「おもしろみ」を感じるお話ばかりで読後感も非常に爽やかで良いです。
空気感が良い漫画、と言うとわかりやすいかも知れません。
それこそなんてことないふつうの夜に読みたい一冊であるように思いました。
『なんてことないふつうの夜に』を読んだら……
ふつうじゃない不思議で楽しくて心温まるたくさんの物語に浸れます。
『なんてことないふつうの夜に』はどんな漫画?
『なんてことないふつうの夜に』には、12のそれぞれ独立した読み切り作品が収録されています。
本当にそれぞれ面白みがあるので、ざっくりと簡単にネタバレしないよう紹介するので、購入の際の参考にして頂ければと思います。
第1夜:ビジネス・ロマンス・ホテル
好きな職場の先輩とビジネスホテルの隣の部屋で一泊することになった主人公の女性。
滅多にないチャンス、と好意を寄せる先輩男性と部屋飲みしないかと誘ってみるが……。
――どうにでも転がせそうなお話ですが、全然想定外のオチでちょっとニヤニヤできます。
第2夜:追憶のネットサーフィン
結婚式用に20代だった頃の自分の写真を探す主人公の女性。
ふと自分がはるか昔に作ったホームページを閲覧してみたところ、20代だった頃に恋人だった男性とのやりとりをホームページ上で発見して――というお話。
このお話は、僕ぐらいの30から40代の人には特に刺さるお話なんじゃないかと思います。
今ではこのブログのようにワードプレスなんていう便利なサービスでブログ書いてますが、昔は「ホームページビルダー」とか使ってコツコツホームページ作ったりしたものなのです。
もちろん、ちょっとオタクな人種の人しかやってないとは思いますが。
お話のオチも、今の時代っぽくて良いです。
第3夜:エレクトリック彼女
アンドロイドな恋人が流行している近未来。
記憶の無い主人公の男性は、彼女がもしかしたら流行のアンドロイドの彼女なのでは?と疑い始めるのですが――。
割とベタな展開でしたが、ちょっとしたひっかけ描写もあって僕は素直に騙されて面白く読めました。
視点を変えることの面白さ再発見な作品。
第4夜:魔法少女の現実問題
3人組の魔法少女として活躍する、普段は普通の女子高生のお話。
魔法少女やってても、普段は先生に髪色怒られたりしているのです。
第5夜:手のひらに地上の星
星新一っぽい、ちょっと不思議なお話。
寝過ごした終点にあった不思議な「夜景」を売るお店。
そこで買った「夜景入りの箱」で過去の事を思い出し――というお話。
案外スッと終わってしまいました。
第6夜:プレゼン前夜
スーパー昇進(?原文ママ)が掛かった超大事なプレゼンの前夜に全く眠れなくなってしまった男性を描いたお話。
ちょっとだけ仮眠とっとこう、と思ってからの全然眠れない感じがすごくよくわかります。
第7夜:ハングリーガールの憂鬱
久々に友人達と3人で会うことになった主人公の女性。
彼女たちの正体と、意外でやけに生々しい悩みが面白いです。
第8夜:おばあちゃんのサンクチュアリ
田舎暮らしをしているおばあちゃん。
かつてはお洒落で都会暮らしをしていたおばあちゃんも、今では田舎に戻り趣味に費やす日々。
そんなおばあちゃんには、絶対に誰にも見せない、サンクチュアリ(聖域)と化した部屋があるのです。
それを遊びにいった主人公の女性が開けてしまい――というお話。
オチを見て思うこと……あると思います(特に現代ではマジに)。
第9夜:2.5次元胃袋
僕の中では一番好きなお話。
嶽まいこ先生ってすごいセンスだな、と思いました。
閉店間際の中華料理屋にふらっと入ってきた美人なお客さん。
そのお客さんはとんでもない量の料理を注文し始め――という本当に2.5次元胃袋なお話。
何が面白いかは、読めばわかります。
最後の1ページの4.5コマが特に好き。
第10夜:机の上のコンシェルジュ
アマゾーヌから突然送られてきた謎の小型人形。
引きこもり男性と、その人形とのちょっと笑えるお話。
最後までかわいいです。
第11夜:わたしの睡魔
3日も徹也している女性漫画家の、睡魔との戦いのお話。
というか、睡魔との共同作業のお話。
なんで睡魔が? って思いましたはい。
第12夜:深夜旅行記
想像力で補完して、その補完の仕方次第では泣けるお話。
ある日突然現れたネコのハルは、少年と毎晩夢の中で様々な場所へ旅行します。
少年はその夢は毎日夢日記として書き残すのですが、ある日ハルが突然いなくなってしまい――。
想像力次第では泣けてほっこりするお話。
全12話の短編集ですが、最後におまけとして12話に出てきた様々な登場人物が大宴会をしているという設定の4コマ漫画が収録されています。最後に振り返りながらニヤニヤできますし、こういうのいいですよね。
『なんてことないふつうの夜に』を読んだ皆さんの反応
『なんてことないふつうの夜に』は読後感爽やかな不思議でちょっと笑える夜の12の物語
『なんてことないふつうの夜に』のちょっと不思議でクスっと笑える12の物語、ぜひ読んでみてほしいです。
特に僕のおすすめは上でも書いたように、2.5次元胃袋ですね。
気持ちの良い食べっぷり、極まる、って感じです。
よく考えたら九井諒子先生も近い発想のお話を描いてましたね!
とにもかくにも、全然重くない軽やかな味わい、それでいてジワジワっと面白い短編が詰まった短編集になっていますので、なんてことないふつうの夜に、お酒でも飲みながらゆっくり読んでみてほしいです。
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