突然ですが、現在の5,000円札に描かれている樋口一葉の前の5,000円札に誰が描かれていたか、覚えているでしょうか?
今でもまだ流通しているので、たまに見かけることがあると思うのですが、その人物こそ1899年に刊行された日本人の心、そして魂の根源を書き記した『武士道』の著者である新渡戸稲造です。
僕も読んだことがありますが、正直難しくてあまり頭には残っておらず、その後小説などで読んだ『葉隠』の内容こそ武士道と勘違いして今に至っていました。
漫画内でも、『葉隠』の方の武士道と新渡戸稲造とが説いた武士道を混同してる人が多い、と割と序盤で触れられており、ドキっとしました。
しかし今回ご紹介する『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』を読み、改めて間違いに気づくと同時に、「武士道というものは危険な思想でもなんでもなくて、日本人の心の源となっている素晴らしい考え方なんだな」と思い直すことができました。
『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』は武士道の基本的な要素がわかるだけでなく、どう間違って解釈されちゃっているかも丁寧に描かれているので、むしろ今だからこそ多くの人に読んで欲しい、とてもわかりやすい武士道入門漫画になっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」 ―――剣は心なり | 著者:岬龍一郎 漫画:涼原ミハル シナリオ:朝日文左 | あさ出版 | 2016年 |
『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』を読んだら……
あなたの「武士道」への堅苦しいイメージが一変します。
『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』はどんな漫画?
まず1つお伝えしたいのが、「武士道」に対する小難しい認識は捨てて欲しいのです。
もちろん、深く読み解けばいくらでもキリなく深読みできるわけですが(そもそも武士道というもの自体が明確な定義がなく曖昧な点も多い為)、そうではなく現代の日々の生活にも武士道精神を活かし、前向きに利用していこう! ぐらいに思って読んでいいと思うのです。
そして武士道の基礎を知れば知るほど、「日本人は自然と武士道に基づいた作法や心構えで生活している」という事にも気づくはずです。
ある意味で武士道を読み解くことは、日本人らしさの再確認でもあると僕は感じました。
この漫画『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』では、現代で営業マンをしている男性「高村瑛太」青年の元へ明治41年で暮らす「平塚なつ」という女性がタイムスリップしてきてしまうところから始まります。
様変わりした現代の様子に戸惑いつつ、なつが100年前の「武士道精神」で現代の様々な間違いや不道徳へ切り込んでいく――という構成になっています。
また、なつが瑛太に武士道を説明する上で過去の歴史上の人物を挙げて説明することが多いのですが、その逸話がいちいち面白いので武士道を学ぶだけでなく、色々と勉強になるのもこの漫画の魅力です。
この漫画は全部で8つの章に分かれています。
第一章では、武士道の中でも特に重要な「義」についてを関ケ原の合戦などを交えながらわかりやすく教えてくれます。
大谷吉継は真の義の者よ!
※過去に明智光秀の漫画紹介しましたが、僕かなり戦国好きです。
第二章では、歌舞伎『東山桜荘子』のモデルである「佐倉惣五郎」の逸話を基に「勇」について学びます。
義を見てせざるは勇なきなり(孔子)。
第三章は、乱暴な振る舞いばかりしている瑛太の会社の社長となつが対峙し、「仁」についてを説く半沢直樹な展開のお話。
平敦盛(たいらのあつもり)を斬った熊谷直実が後に蓮生法師となる逸話は心震えます。
第四章では、どんな者に対してでも「礼」の気持ちを忘れない事の大切さを学べます。
千利休の逸話が面白いです。
第五章では、嘘をつくことを何よりも恥じた「誠」の精神について学べます。
特に商売に関する逸話が面白く、仁でお客に対する思いやりを持ち、義で正直さを持って接し、礼でお客を心から敬い、智でいいものをいかに安く提供するかに知恵を使い、それらを守れば信となり店が繁盛する。
つまりは誠実で信がある者だけが稼ぐことができる。
「儲」という漢字はまさにそれを表している漢字なのだ。
――というお話にはやけに説得力があり「なるほどねぇ」と思いました。
第六章では、西郷隆盛の逸話を基に武士が重んじた「名誉」について学べます。
これもまた面白い章です。
なつと瑛太の関係にもちょっと変化があり、割とドラマチックな展開に。
第七章では、菅原道真のショッキングで悲しい逸話を基に「忠義」についてが学べます。
この忠義だけは新渡戸稲造自身も「他国の者には理解されないかも」と言っているのですが、確かに「忠義を尽くして死ぬ」みたいな考え方は独特ですし、海外の方からしたら「なにそれヤバイ考え方」と思われる可能性もあります。
この章では、新選組の土方歳三の逸話などを用い、いかにその忠義が武士道にかなったものであるかを学べます。
そして最後の終章では、ついにこの漫画の導き役をしてくれていた明治の女性なつが、元の世界に還ることになります。
そして、「ノーブレス オブリージュ(高き身分の者に伴う義務)」について学べます。
――最後に瑛太となつはお互いを忘れない為にある物を交換して渡すのですが……。
最後はまるで「君の名は。」なとんでも胸キュンオチで武士道精神もふっとぶかわいいなつのショートカットに萌えて完。
堅苦しく進むかな、と思いきや予想外に読みやすかったですし、物語もそこそこ面白く、何より偉人達の逸話が面白い割と贅沢な武士道入門漫画でした。
『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』を読んだ皆さんの反応
『まんがでわかる 新渡戸稲造「武士道」』は現代にも息づく武士の心が学べる武士道入門漫画
今回この漫画を読んで、「ああ日本人ってなんだかんだ武士道が根付いてンだなぁ」なんて漠然と感じました。
日本人の気質も武士道的な気がしますし、良くも悪くも日本人らしさというのは武士道と少なからず関係しているな、と思います。
そもそも日本人らしさって何だろう?
なんて思っている方には、この超わかりやすくて内容も面白い漫画を全力でおすすめしたいです。
冒頭でも書きましたが、変に堅苦しく考える必要はないのです。
宗教的側面もあるのが思想なので、それこそ自己啓発本を軽い気持ちで読むような気軽さで読んでいいと思います。
そして読めばわかる、日本人の考え方に一番沿っているのが「武士道」なんだな、なんて僕は思いました。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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