子供の頃、どのように世界を見ていて、どんなことを感じ考えていたか……。
僕は正直なところ、ほとんど覚えていないです。
しかし、今回ご紹介する福島鉄平先生による『こども・おとな』を読んで、すごくしっくり来る懐かしさを感じました。
多くの物事の「なぜ」をほとんど知らないほどに幼かった頃、『こども・おとな』で描かれている小学一年生のサトルがそうであるように、怒られることがツライわけでも悲しいわけでもなく、まるで吸収するかのように「なぜ」を理解していく。
そういった描写に、うまく言葉にはできないのですが「そんな感じだった気がする」という不思議な懐かしさを感じました。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
こども・おとな | 福島鉄平 | 集英社 | 2016年 |
『こども・おとな』を読んだら……
子供の頃のものすごく繊細でピュアな心の機微を思い出し、泣けます。
『こども・おとな』はどんな漫画?
『こども・おとな』は1巻完結の連続している内容の漫画で、全6話の構成です。
主人公となるのは小学1年生の相田サトルで、可愛らしい見た目と純粋な好奇心、そして世界を「知らない」普通の男の子です。
物語に大きな起伏のある作品ではなく、サトルを通して見る大人の世界、初めての世界への不安やワクワクや学びを感じる、不思議な空気感の作品になっています。
各話どのような内容か、ネタバレしないよう簡単に紹介してみますので、読む際の参考にしていただければと思います。
第1話:せんせい
最初のお話は、学校での先生とのお話。
小学一年生で、家が世界の全てであったサトルにとって、小学校はわからないことだらけの世界。
担任の先生は口調はぶっきらぼうながらも、サトルを叱り、「なぜ」を教えていきます。
好奇心と気づきに満ちたせんせいとの素敵なエピソードです。
※最後にクラスの女の子の名前を知る展開があったので『神様がうそをつく。』のような甘酸っぱい話になるのか?とも想像しましたがそれは完全に間違った予測でした。
第2話:おにいちゃん
サトルの4歳年上のおにいちゃんとのお話。
全然仲良くない――という主張とは裏腹に、しっかりとそこにある兄弟の愛や絆のようなものが読み取れます。
特に僕は男兄弟しかいない中育ったので、その絶妙な空気感と雰囲気がたまりませんでした。
いがみ合っている時間の方が長くても、やはり兄弟は兄弟なのです。
第3話:おとうさん
顔も明かされませんが、サトルのお父さんとのお話。
お父さんはあまりコミュニケーションが上手い人ではなさそうなのですが、しっかりとサトルを想っている事がわかる、これまた不思議なあたたかい空気感に包まれたお話。
子供の頃って、本当に些細な「嬉しかったこと」をずっと覚えていて大人になっても影響していたりするものです。
そんな事をふと考えました。
第4話:ちがうくみのともだち
ちょっと変わったクラスメイトの男の子マサトとのお話。
サトルの純粋さと優しさ、マサトの危うさなど、これまた胸がちょっと締め付けられるような幼い頃の不思議な感情を呼び起こされるお話。
むしろこのお話ではマサトの方の気持ちにちょっと感情移入してしまいました。
第5話:おじいちゃん
訛りがゴリゴリにすごいおじいちゃんの家に預けられた時のお話。
おじいちゃんが教えてくれる様々な事が胸に沁みます。
挨拶を返してくれなかった男性が途中出てくるのですが、様々な事を想像させますし、最後にじいちゃんが教えてくれる言葉がこれまた沁みます。
第6話:おかあさん
最後はほとんど登場してこなかったお母さんとのお話。
母の教え、たくましさ、そして愛情。
それらをしっかり感じられる、泣けるお話です。
登場人物達の描かれ方が話の中でコロコロ変わるのですが、その切り替えもまた泣かせます。
『こども・おとな』を読んだ皆さんの反応
『こども・おとな』は子供の頃に見ていた不安と好奇心に満ちた心を鋭く描いたなつかしさも感じるおすすめ1巻完結漫画
福島先生の絵はとにかく繊細で、表情から食べる物、そして背景までもが意味を持っているんじゃなかろうかという細かさなので、何度も繰り返し読みたくなります。
今回ご紹介した『こども・おとな』は子供の頃の感覚をそのまま描いてくれているかのような(覚えていないのではっきりと言えるわけはないのですが)懐かしさを感じます。
子供の頃に接した、大きな存在だった先生。
仲良くなんかない、と思っていたけれど確かに愛と絆があった兄弟。
思い返せばしっかり考えてくれていたんだな、と思える母親。
じっくりと空気感と雰囲気に浸りながら読んで欲しい、不思議な懐かしさを感じるおすすめの1巻完結漫画でした。
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詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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