誰にも知られていないし、誰も覚えていないに決まっている。
それでも自分の心の中で大きくはないけれど、小さなわだかまりとして確かに存在し、時折チクチクと痛み出す。
――あなたにはそんな、後ろめたいような記憶や思い出はないでしょうか?
『応天の門』で第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞した灰原薬(はいばらやく)先生の短編集、『回游の森』は、そんな人間の心の奥底に眠る罪悪感であったり秘密であったりをとても美しい絵とコマから滲み出る雰囲気によって描いた読み切り漫画です。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
回游の森 | 灰原薬 | 太田出版 | 2010年 |
表情や口のわずかな歪みまで、細かな心理描写で人のやましい心の底を描く、読んでいてなぜか少しドキっとしてしまうような読み切り漫画です。
『回游の森』を読んだら……
美しいけれども罪悪感や心の奥底の感情が揺さぶられ、なんとも言えない気持ちになります。
『回游の森』はどんな漫画?
『回游の森』は7つの短編から構成された読み切り漫画なのですが、全ての話はほんの僅かに関連しています。
幼い少女へ抱いてしまった気持ち、そして罪悪感。
同性の少女とのキスから揺さぶられるはじめての不思議な感情。
誰にも理解されないペットへの偏愛。
などなど、なんとも言えない、自分の見てはいけない気持ちなどを他人の人生を介して(漫画としてではありますが)見ているような気持になり、非常に不思議な読後感を味わえます。
読んでいて、本当に作者は人間の心の奥底の微妙で繊細な心理を描くのがうまいなぁ、と思いました。
全く同じではなくとも、誰もが経験していると思うのです。
過去の小さな過ち。
誰も覚えていないし、気にしていないのに、自分の中では非常に大きな人生の汚点のように残り続けてしまう記憶。
ああ、なんとも心が抉られる恐ろしい漫画です笑
『回游の森』はどんな人におすすめ?
上述の通り、かなり人間の心の闇にスポットを当てたような物語が展開していくので、ハッピーな気分になりたい時にはおすすめしにくいです。
代わりに、
自分も心の中に誰にも言えない秘密にしている闇がある人。
何らかの罪悪感にずっと悩み続けている人。
人間の微妙な心の動きにスポットを当てた漫画が読みたい人。
などには全力でおすすめします。
僕も割と心の奥底に闇のような、罪悪感が固まって石コロになってしまった塊みたいなのがコロコロあるので、とてもこの漫画は刺さりました。
また、同性愛への目覚めのような描写もあるのですが、それも特に今の時代には受け入れられるべき感情であると思いますし、同性愛への初期衝動のような心の機微も実に上手く描かれていてドキドキしました。
『回游の森』を読んだ皆さんの反応
わずかにつながっている7つの物語を読み進んでいき、最後の物語でしっかりと落とす感じもスッキリしてただの暗めの短編集にはなっていないのが素敵なのです。
↑↑この方のおっしゃること、とてもよくわかります。
とても質の良い宝石を持っている気分です。
↑↑この方のおっしゃる「透き通った美しい後ろめたさ」というのが本当にこの漫画の事をよく言い表してるな、と思います。
偏愛と秘密に満ちた人間の奥底の罪悪感を覗き見したい時におすすめの『回游の森』で美しいほどの後ろめたさに触れてみては?
『回游の森』はおそらく万人が読んで面白いと思える漫画ではないと思います。
しかし、人によっては心に強く響く作品となり、この作品と出会えてよかった、とすら思えるのではないかと思います。
僕はこの作品に出逢えてよかった、と強く思いました。
読み切り漫画の良さって、その1冊で完結しているので本当に小さな宝石を見つけたような気分になれるんですよね。
興味を持てた方は、是非試し読みだけでもしてみて下さい↓↓
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