もしあなたが既に阿部共実先生の作品のファンであるならば、きっとこの短編集はあなたの期待に応えてくれるものと思います。
しかしもしあなたが阿部共実先生の漫画を読んだことがないのであれば、もしかしたら今まで味わったことのない衝撃を受けるかも知れません。
阿部共美先生は、『空が灰色だから』や、このブログでも紹介した『ちーちゃんはちょっと足りない』を生み出した漫画家さん。
僕も全く阿部先生の作風を知らずにちーちゃんを読んで、大いに衝撃を受けたものです。
一見ほっこり優しい日常系漫画かと思いきや、急に不気味な雰囲気になっていき、最後には狂気を感じる雰囲気に変化していく情緒不安定な作風。
しかしそのちょっと狂気的な部分こそが阿部共美作品の魅力であり、ほっこりしているように見える日常にも各々が抱える闇が潜んでいるように、しっかりと闇も描くのです。
今回ご紹介する『大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集』は、本当にほっこりするような話から、破壊的なお話、そしていつもの狂気を感じるお話までが収録された、阿部共美先生を深く知る上ではぜひ読んでおきたい短編集となっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
大好きが虫はタダシくんの 阿部共実作品集 | 阿部共実 | 秋田書店 | 2013年 |
『大好きが虫はタダシくんの』を読んだら……
最高な漫画は阿部先生が好きからにしておけばと感動。
『大好きが虫はタダシくんの』はどんな漫画?
『大好きが虫はタダシくんの』には、7つの異なるお話が収録されています。
それぞれが全く異なる雰囲気になっているので、フラットな心で読んでいないと色々と心が振り回されることになると思います。
ざっくりと簡単にそれぞれのお話を紹介してみますので、購入する際の参考にしていただければと思います。
灰色
フルカラー作品。
灰色な世界、灰色な心、そんな気持ちを変えたくて近所の小学生の間で流行っているというリボンを久しぶりに着けてみたけれど……。
乙女心
こちらもフルカラー作品。
女心と秋の空をそのまま漫画にしちゃったような、可愛い内容のお話。
センス良い一作。
ドラゴンスワロウ
女子ソフトボール部に所属する女子高生のお話。
1番ピッチャーの朝倉たつみ(1年生)と、たつみが憧れて止まない4番キャッチャーの水野燕(2年生)のイチャイチャが中心の学園ギャグ作品。
タイトルのドラゴンスワロウは、恐らくはヒロイン2人のたつみ(ドラゴン)と燕(スワロウ)から取っているものと思われます。
あとドラゴンズとスワロウズも当然元ネタかと。
ただし野球漫画でもソフトボール漫画でもないです。
全15話。
破壊症候群
あらゆる物の急所が見えてしまう特殊能力を持った女子高生が、虫人間達をやっつけるお話。
阿部先生のかわいいタッチの絵柄で良かったぁ、と心底思う作品でもあります。
虫と言えば、で僕は思い出してしまう田中雄一先生のタッチだったら多分しんどかったです笑
とにかく最後はぶっ壊すお話。
気持ちいいいぐらいにぶっ壊します。
あつい冬
さて。
ここら辺からちょっと読む側も気合が必要になってきます。
1つ前のお話、「破壊症候群」もぶっ飛んだ内容ではありましたが、この「あつい冬」からはいよいよ阿部先生らしい狂気を感じる内容になってきます。
このあつい冬は、ボケとツッコミ練習をしている女子高生のお話なのですが……。
読んで結末を見届けてください。
デタジル人間カラメ
デジタルカメラで盗撮を疑われた中学生男子のお話。
なのか?
これはもう、狂気ですし、ストンと腑に落ちる方が難しいんじゃないかという内容。
大好きが虫はタダシくんの
そして最後の問題作、表題作にして最強の衝撃作です。
まず読む前から感じていた違和感、「なんかタイトルおかしくね?」という自分の感覚は間違っていなかった事が判明してホッとしました。
中心となるのは、奈緒ちゃんという女の子と、詩織ちゃんと呼ばれる女の子なのですが、詩織ちゃんがヤバイ。
『ちーちゃんはちょっと足りない』を読んだ方になら、「ちーちゃん」をもっとやばくした女の子、と言えば伝わるかも知れません。
言葉もヤバイ。
情緒もヤバイ。
過去も想像するしかいのですが、きっとヤバイ。
ほぼ読者が想像して補完するしかないのもヤバイ。
この作品集の最初の方に読んだ「乙女心」あたりからのギャップもヤバイ。
一番恐ろしいのが、もっともっと阿部先生の作品を読みたくなっちゃう事です。
読めばわかる、阿部先生の生み出す狂気と闇の真骨頂、といった感じの作品です。
『大好きが虫はタダシくんの』を読んだ皆さんの反応
『大好きが虫はタダシくんの』は阿部共美先生による日常と破壊と狂気が詰まった作品集
割とほんわかしたお話から始まり、後半にかけて狂気的なお話が収録されているというその並び順もなかなか考えられています。
本当は全く予備知識なく読んだ方が面白いのでしょうが、人によっては後半で混乱し過ぎる可能性もあるのでざっくりと紹介させて頂きました。
上に紹介したツイートにもあるように、確かにこの作品集は阿部共美先生の作品の中でもハードコアな作品なのかも知れません。
1巻で完結していて、短編ではなくつながった物語になっているという意味でももしかしたら『ちーちゃん……』の方が次第に狂っていく感じなどがより味わえるので阿部先生に入っていう一冊としては読みやすいかも知れません。
阿部先生の独特な視点と描写は、刺さる人にはすごく深く刺さると思いますので、ぜひ一度は読んでみて欲しいと思います。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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