皆まで語るまい。感じるのじゃ!
――というタイプの読み切り作品、個人的にはとても好きだったりします。
今回ご紹介する『未来のゆくえ』は、まさにそのような「空気感と雰囲気から感じとる」ことでより深い味わいになる漫画です。
作者は『神様ドォルズ』などが代表作のやまむらはじめ先生。
作品自体は1999年頃に連載されていたものなので、今の作風と少し違っている部分もファンは楽しめます。
青春と恋と切なさの詰まった1巻完結の読み切り傑作漫画になっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
未来のゆくえ | やまむらはじめ | 少年画報社 | 1999年 |
『未来のゆくえ』を読んだら……
日常の何気ない雰囲気を切り取った、不思議な空気感に浸れます。
『未来のゆくえ』はどんな漫画?
『未来のゆくえ』は、6つのそれぞれ独立した物語が収録されている短編集です。
そのうち、後述しますが1つは複数話にまたがる物語になっています。
では、切なさあふれるそれぞれのお話をネタバレし過ぎぬようざっくりと各話紹介してみますので参考にしてください。
Scene1:最後の夏
まず最初の物語は、陸上部でのお話。
とある事故で走る事をやめてしまった主人公が、後輩の女の子のコーチを担当することになり、様々な葛藤をしつつ後輩共々成長していくという内容。
夏を感じるラストカットがとても良いです。
Scene2:最後の夏~Second take~
最後の夏、と前話と同じタイトルですが、別のお話。
主人公の高校生が海でばったり再会した相手は、あの日死んでしまった親友の恋人――という導入。
後半まで読まないと、高校生ってわからない大人びた風貌。
いろいろと理解できそうなラストが味わい深いです。
Scene3:まつりの景色
この「まつりの景色」というお話は、全3話あります。
主人公の男の子がいた学校に転校してきた女の子。
その女の子が不良にからまれているのを助けた主人公ですが、大した会話もできないままその女の子はすぐに再び転校していってしまいます。
それから数年後、大人になった主人公が、ひょんなことからその女の子と再会することになり、物語が動いていきます。
最後がまた色々と想像させる終わり方でとても味わいがあり、泣けます。
Scene4:よるのむこうに
親戚の女の子を預かることになるパターンのお話。
そんなのちょっとアレな事やソレな事が起きそうになるでしょう?
割とシンプルで短いお話。
Scene5:肩幅の未来
中島みゆきさんの歌に同名の歌があります。
おそらくそこから着想を得たものと思います。
これはちょっと読んでみて欲しいです。
様々な想像が出来ますし、多くを説明してくれていないのが逆に考えさせられる、またまた味わい深すぎて泣けるお話。だと思うのですが。
Scene6:OUR DAYS~されど我等が日々~
主人公の女性が久々に帰省し、そこで昔の友人とその娘とバッタリ出逢うお話。
切なさとかではなく、最後のこのお話はとても生々しい会話、そして現実感が漂う不思議な読後感の物語でした。
最後、一人になった場面で雪が降り出すのですが、その描写と雰囲気がまたとても良いです。
最後まで、味わいのある作品ばかりの短編集でした。
『未来のゆくえ』を読んだ皆さんの反応
漫画家さんの昔の画風が知れるのも短編集の良さですよね。
未来のゆくえファンはかなりいらっしゃるみたいですね。
『未来のゆくえ』は空気感と想像力で深まる切ない青春物語が詰まった短編集
とにかく最後まで味わい深い作品ばかりだった『未来のゆくえ』でした。
以前紹介した池辺葵先生の『雑草たちよ 大志を抱け』も雰囲気がすごく良い傑作だったのですが、それとはまた全然違うタイプの空気感だったように思います。
特に、説明が少ないが故にあれこれ読者が想像しちゃって、想像することによって「え、もしかして……」と色々なことに気づかせるのが上手いなぁ、と思いました。
『神様ドォルズ』とはまた全然違うタッチですし、雰囲気も最高なので切なくて雰囲気重視の短編集をお探しの方はぜひ読んでみてほしいです。
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