ものすごい気迫と熱量を持って追い求め続けている「笑いで天下を獲る」という夢。
しかしバイトをしながら必至に夢を追う主人公は、かつて切り捨てた元相方が漫才グランプリで優勝したという一報をバイト先で知る。
夢追い人の、葛藤と挫折と気付きの物語……。
――今回ご紹介するのは、山原中先生による『余白の世界』です。
この作品は第79回ちばてつや賞一般部門において大賞受賞作品で、読めば大いに納得の感動と気付きに溢れた傑作になっています。
『余白の世界』は一言でどんな漫画?
笑いで天下を獲ることだけを目標に必至に生きてきた男の、挫折をして絶望し、そして気付きを得て成長していく――という過程を描いた深くて感動的な読み切り作品。
この時点でもう読みたい!と思った方はぜひ読んでみて下さい。
読もうか迷っている方は、この記事を読み進めて判断していただければと思います。
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タイトル | 作者 | 本編ページ数 | 読めるサイト |
余白の世界 | 山原中 | 37ページ | コミックDAYS |
『余白の世界』の超ざっくりあらすじ
お笑いへの熱い情熱を持っている主人公・真島は、その日バイト先でかつての元相方が漫才グランプリで優勝したという一報を知った。
お笑いの仲間には「相方潰し」とまで陰で呼ばれ、今の相方は適当な性格。
真島はそんな恵まれずに足掻いている自分と比べて一気にスターになった元相方の活躍を素直に喜ぶことはできなかった。
10ヶ月後――元相方は今年も漫才グランプリの準々決勝まで勝ち進んだ真島に激励の言葉をくれた。
今年こそはと意気込む真島だったが、真島の今の相方は漫才グランプリ準々決勝が近づいてきても飲み歩いており、一向に真剣さが感じられない。
そして迎えた漫才グライプリ準々決勝の本番、やはり真島の指摘した箇所を直してこず、適当なままな相方。
そんな相方と迎えた準々決勝本番で、ついに真島の中で何かが切れてしまことになり……。
『余白の世界』のネタバレあり感想
これはもうすんごく面白かったし、いいもの読んだなぁ、という気持ちになりました。
芸人の多さや漫才グランプリでのドラマが数多く見聞きするようになった今、題材自体はそんなに珍しいものでもないのかも知れません。
しかし元相方への嫉妬であったり、今の相方への怒りだったりと、実に生々しくて人間くさい描写が満載の今作は面白く読めるのと同時に、心がえぐられるような感覚にもなりました。
布団に入ってから悶々と考え続けてしまい、眠れなくなる夜。
喜んであげたいのに、どうしても笑顔になれない元相方との再会。
相方潰しとまで噂されていることも知っているのに、変えることのできないお笑いへのスタンス。
ひたすらに頭の中に溜まり続けていくゴミと化した膨大なキャッシュ。
――それら全てが爆発してしまう漫才グランプリ準々決勝の本番の描写は、読んでいてハラハラしましたし同時に「くるべきものがきてしまった」という感もありました。
そしてこの作品が凄いのは、真島が一旦ぶっ壊れてからの展開です。
散々疎ましく思っていた今のチャラい相方が、全く凹んでいる素振りもなく、むしろ楽しんでいることに真島は気づきます。
さらには相方はYouTubeでの動画配信なども持ちかけてきて、暗さが微塵もありません。
そんな良い意味で適当で前向きな相方を見て、真島は全く異なる世界を見ることになります。
夢を追いかけながら渡ってきた綱から足を滑らせてしまったけれど、実は綱は地上からそんなに離れていなかった……。
真島が渡っていた綱は確かに頂上へと通ずる近道ではあったけれど、それとは別の、地に足を着け着実に登っていく道もしっかりとあった……。
そして何より、悲壮感漂う表情で真島が綱渡りをしていたのとは全く異なり、今の相方はとても楽しそうに頂上へと続く道を歩んでいる……。
セリフもないけれど多くの事を語ってくれた見開きページが素晴らしすぎました。
そして「気づいた」真島は、それからは楽しんで漫才をし、夢を追いかけていきます。
最後のページ、元相方と再会した時にお互い笑って目を合わせる描写、泣けました。
終盤では、かなりセリフ量は少なくなり、絵で見せる構成となります。
僕は、ここで書いてきたように感じましたが、読む人によっては違う感想を持つのかも知れません。
とにもかくにもそのような様々な解釈ができるし、様々に想像したくなるとても素晴らしい作品だったと思います。
『余白の世界』を読んだ皆さんの反応
『余白の世界』は全ての夢追い人必読の葛藤と感動とセンスが凝縮された傑作おすすめ読み切り漫画
素晴らしい余韻に浸れる最高のドラマな読み切り作品でした。
さすがちばてつや賞大賞作品。
深くて考えさせられますし、とにかく読後感が最高です。
多くの夢追い人に読んでほしいなぁ、と感じました。
もしまだ読んでいないのであれば、きっと何かを得られる物語になっていますのでぜひ読んでみてください。
そしてこの『余白の世界』が面白かったのであれば、作者である山原中先生を応援し最新情報をチェックしてみてください。
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