以前ご紹介した『スキエンティア』に続き、戸田誠二先生の短編集を今回はご紹介。
やはり短編集であり、またSFな物語多いのですが、戸田誠二先生の作品は本当にどれも期待を裏切らないといいますか、SFなのにリアリティを感じる描き方で実に引き込まれ、そして読後感も変に暗くなったりせず「良いお話を読んだ」感覚に浸れるのがすごいところ。
今回ご紹介するのは、そんな戸田先生の『説得ゲーム』です。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
説得ゲーム | 戸田誠二 | JIVE(初版時は宙出版) | 2006年 |
『説得ゲーム』を読んだら……
戸田先生なりの深すぎる「人生」や「生きること」へのヒントがもらえます。
『説得ゲーム』はどんな漫画?
『説得ゲーム』は、5つの短編集から構成された読み切り漫画です。
ジャンルは近未来を描いたSFではありますが、一貫して「科学技術が発展した近未来でも変わらぬ普遍的な悩み」などが描かれており、突飛な内容に感じることが全くありません。
戸田誠二先生の作品はこのフィクションとリアルとのバランスのとり方が非常にうまいと僕はいつも思います。
ざっくりと、あまりネタバレしないよう各話どんなお話かご紹介していきます。
キオリ
SF作品の一つの大きなテーマでもある、「脳としてのみ生きている人は人と呼べるのか?」というような思考実験的でもあるお話。
自殺を図った若い女性の脳のみを培養し、生き永らえさせるという倫理的にも問題ある実験に参加した研究者達の物語ですが、終わりが非常に考えさせられる内容でした。
ある意味で多くのSF作品への、戸田先生なりの答えであり考えであるとも思える、温かい終わり方。
タイムマシン
5ページほどしかない超ショートストーリー。
しかし非常に強烈に心に残る、素晴らしいお話です。
タイムマシンが出来たとして、あなたはどのように使いますか?
何ページにも出来そうなテーマを、逆に5ページにまとめた戸田先生の手腕に驚くばかり。
NOBODY
奇病にかかり、体が麻痺していってしまうラガーマンの主人公。
そんな主人公が、奇跡的に脳だけ死んでしまった男性に脳を移植することで、外見も体も全部違うけれど、脳だけは元ままとなり生きていくお話。
焦点の当て方によってどんな物語にでも出来そうなテーマですが、流石の戸田先生、ラガーマンであった主人公の両親と、さらに身体を提供してくれた男性のお母さん側の描写がかなりリアルで心が痛くなります。
さらに恋人ともギクシャクし始め……一つの人生で二人分の身体を生きることになった主人公は最後にどんな選択をするのか?
泣ける良いお話です。
説得ゲーム
小さなゲーム制作会社に勤める男性が主人公で、誰かの作った「説得ゲーム」というゲームソフトをめぐるお話。
てっきりそのゲームクリアを競うようなお話になっていくのかと思いきや、主人公と繋がりのある人物の登場で予想外の方向に。
説得ゲーム内の自殺を図る女性と、主人公の男性との会話が印象的でした。
上下の話ではなくとも、やはり説得していた男性の方が大人な意見を言っているように思えましたし、それも最後の展開に繋がっているようでじわじわ感動。
クバード・シンドローム
クバード法という特殊な手術で、条件に合致すれば行うことができる「男性の出産」についての物語。
テーマが非常にデリケートであるにも関わらず、男性が妊婦の生活を行う描写は大分考えさせられますし、子供をかわいく思えるのか? そもそも子供が欲しかったのか? などという不安までも描写しており、非常に素晴らしい物語でした。
最後にはきっと泣いてしまいますし、こんな未来ももしかしたら来るのかも、と思わせるような内容です。
しっかりと「どのように男性での出産を行うか」という事も具体的に描かれており、アイディア先行のぶっ飛んだ内容ではなく説得力があるのも流石。
――5つの短編をざっと紹介しましたが、どれも心温まる感動を得られ、読後感も非常に良いので誰にでもおすすめできる一冊であると思います。
ぜひ、お話の結末はご自身で読んでみて欲しいです。
『説得ゲーム』を読んだ皆さんの反応
僕としては最後の「クバード・シンドローム」と「タイムマシン」が衝撃でした。
「NOBODY」も最高に良いお話。
本当に戸田誠二先生は短編の名手だと思います。
SFなのにリアルで身近に感じる『説得ゲーム』は人生を感じる全人類に読んで欲しい読み切り漫画
流石の戸田誠二先生!
と言った感想がまず浮かびました。
どのお話も、途中意外な展開へ転がっていき、最後には心あたたかく泣かされる。
特にこの『説得ゲーム』は、表題作もとても美しく、最後の男性妊娠の話も考えさせられ、とにかく素敵な感動ばかりの傑作揃いでした。
どなたにでもおすすめしやすい、全人類に読んでみて欲しい一冊です。
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