日本においても弥生時代から存在していたとされる歴史のある養蚕(ようさん)。
そして養蚕の要である蚕(かいこ)は、今回ご紹介する漫画の作中でも語られているように、唯一の野生回帰能力を完全に失った家畜化動物でもあります。
これはどういうことかというと、自然に返すような事もできず、仮に餌となるクワの木に留まらせて放置したとしても、落ちてしまったり自ら餌を探して食べようとせずに死んでしまうのです。
つまりは本当に人間の管理なしでは生きていけない、それが野生回帰能力を完全に失うということなのです。
そんな蚕のDNAを改良し、野生回帰能力を取り戻して人間と共存させる――そんな壮大な夢を持ち研究に明け暮れた男の物語『御蚕様改良記録』を今回はご紹介。
作者は光秀日量(みつひでひばかり)先生で、連続読み切り連載となった次作『パクリ戦争』との振り幅のすごさでもちょっと話題になりました笑
作品を紹介する前に一つだけ書いておきますが、かなりテキスト量が多い作品で、漫画×小説ぐらいにがっつり文字が配置されています。故にものすごい読み応えと重厚な世界観となっているのですが、文字を読むのがちょっとツライ時などには読まないほうが良いかも知れません。
『御蚕様改良記録』は一言でどんな漫画?
蚕を野生へと回帰させる為に研究を生涯続けた男の、凄まじい養蚕愛と執念を描いた漫画。
この時点でもう読みたい!と思った方はぜひ読んでみて下さい。
読もうか迷っている方は、この記事を読み進めて判断していただければと思います。
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タイトル | 作者 | 本編ページ数 | 読めるサイト |
御蚕様改良記録 | 光秀日量 | 32ページ | コミックDAYS |
『御蚕様改良記録』の超ざっくりあらすじ
藤宮秋優は養蚕所の跡取り息子として産まれた。
幼いころから秋優は養蚕を手伝わされ、同時に蚕は野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜であることを知り衝撃を受けた。
後に大学で遺伝子工学を学んで卒業し無事に養蚕業を継いだ秋優は、養蚕を継ぐと同時にひっそりと研究をする為の設備も作った。
本業の傍らで、秋優は蚕のDNAを組み替えて遺伝子疾患を修復し、ペットとして販売する計画を進めていた。
それは本業の経営難を助ける事になってほしいという思惑と同時に、人間と蚕とが本当の意味で共生することの出来る世界を作るための研究の第一歩でもあったからだ。
その研究は徐々に進んでいき、ペットとしての蚕もゆっくりと世間へと浸透していった。
しかしそれを大きな事業として展開していく中で、徐々に蚕とは別の部分での亀裂が生じ、歯車は狂っていくことになり――。
『御蚕様改良記録』のネタバレあり感想
なんとも好奇心を刺激しまくってくれる知的な物語でした。
冒頭でも書きましたが、テキスト量はかなり多いです。
本当に漫画と小説の中間ぐらいに文字量あるので、32ページというページ数でなめてかかると痛い目に遭います。
その代わり、じっくり読むと非常に面白く重厚な世界観が丁寧に作られていることがわかります。
この作品はアフタヌーン四季賞2020春において沙村広明特別賞を受賞している作品。
沙村先生と言えばこのブログでもいくつか1巻完結漫画を紹介していますが、なるほど読めば納得の沙村広明特別賞な凄まじい作品でした。
作中、養蚕家の秋優は蚕の野生回帰能力を取り戻す為の研究を始めます。
僕も知りませんでしたが、本当に蚕というのは人間の管理下でないと生きられない唯一の家畜なのだそうで、衝撃を受けました。
そして、養蚕業の経営難を救うためと、研究のためとの一石二鳥を狙った蚕のペット化計画は、様々な研究者の協力の下でなんとか達成されていきます。
果たして現実世界で同じことをやって流行るか?と考えると難しい気がしますが(多くの人はキモチワルがるでしょうから)、この漫画の中ではアルビノ種であったり、様々な動物との遺伝子組み換えを行うことによってビジュアル的にも可愛らしい蚕を作り出していきます。
しかしいつだって障害となるのは人間ですね。
この作品でも、共にプロジェクトを進めてきた研究者と仲違いし、徐々に順調だったはずのプロジェクトは壊れていきます。
中盤を読んでいて思い出したのが、安堂維子里先生の『妖精消失』。
『妖精消失』では妖精をキット化し販売した商品が大流行しましたが、やはり様々な人間の思惑や妖精側の思惑で壊れていく、最高のSFファンタジー作品になっていました。
『御蚕様改良記録』でもやはり最後に敵となるのは人間。
追われる身となった秋優は、妻である千聡とも別れ、1人最後の研究に臨みます。
クライマックスでは研究所にまで警察に踏み込まれて射殺されてしまいますが、研究成果である「御蚕様改良記録」はしっかりとかつての妻、千聡の元へ届けられ、空を舞う蚕の姿で物語は結ばれます。
人間の管理下でなければ生きていけないはずの蚕が自由に空を飛んでいる。
秋優が夢見た世界は、もしかしたらもう叶っていたのかも知れない……。
そんな想像をさせる、素敵な余韻の結末。
総じて読み応えも凄まじく、フィクションとノンフィクションを巧く融合させて知的好奇心をも刺激し、最高の結末で最高の余韻を残してくれる傑作読み切り漫画でした。
『御蚕様改良記録』を読んだ皆さんの反応
『御蚕様改良記録』は養蚕家が蚕のペット化を研究した重厚なおすすめ読み切り漫画
非常に読み応えのある傑作でした。
32ページにこれだけの内容をぶち込めるというのも凄いです。
ただ、繰り返しますがテキスト量かなり多めなので読む際には腰を据えて読むことをおすすめします。
しかしながら読めばきっと虜になる凄まじい世界観なので、ぜひ読んでみてほしいです。
そしてこの『御蚕様改良記録』が面白かったのであれば、作者である光秀日量先生を応援し最新情報をチェックしてみてください。
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