ひたすらにアルバイトや派遣の仕事をしまくり、日々疲れ切っている主人公。
そんな主人公が、食べ物への執着や好奇心でなんとか心を奮い立たせ、苦しいながらも生きていく……そんな非常にジャンル分けするのが難しい衝撃作『ご飯は私を裏切らない』を今回はご紹介したいと思います。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
『ご飯は私を裏切らない』 | heisoku | KADOKAWA | 2020年 |
作者は新進気鋭のheisoku先生。
読めばわかるのですが、恐らく作者であるheisoku先生自身もかなりの数のアルバイトをしてきたのではないかと思います。
じゃないと、ここまで細かく多くのバイトの裏話などは描けないと思います。
そして主人公は正直に言えばかなり暗い性格で、割と世の中に対して冷ややかな視点を持って生きています。
それこそがこの漫画が非常に面白く、独特である最大の理由です。
『ご飯は私を裏切らない』を読んだら……
ブラックバイトな日々の女性と、それを救うごはんという絶妙なバランスの漫画が楽しめます。
『ご飯は私を裏切らない』はどんな漫画?
はーしんどい
↑↑から始まるこの漫画は、割とこの始まりの一言がこの漫画の特異性を表しているように思います。
『ご飯は私を裏切らない』は、名前すら明かされない女性が主人公。
29歳の最終学歴は中卒、恋人いない歴はイコール年齢、友人もいなくてバイト以外に職歴なし――という、ある意味ステレオタイプなダメっ子です。
作品全体を通して、この主人公は様々なバイトを休む間も無く毎日しています。
特に楽しんでいるわけではなく、不器用で怒られまくりながらもなんとか生きる為だけにバイトしまくっている、という感じです。
まずここでお伝えしておきたいのが、この漫画は明るい漫画ではありません。
ただ、日々バイトでクタクタになりつつ帰ってからのご飯だったり、バイトの休憩中のご飯であったりがこの主人公を癒し、救い、また明日を生きようという力を与えるのです。
漫画自体のボリュームは160ページほどで、1巻完結作品としては少なめ。
ただ、ページ数以上にものすごく読み応えがあります。
その理由が、この作品の主人公が食べ物への考察であったり、あるいは食材へのウンチクであったりを細かく語ってくれるのでテキスト量がかなり多いです。
そして主人公によって語られる様々な考察やウンチクは、しっかりと「バイトで擦り切れまくってる女性」という設定からブレない、ちょっとひねくれていたりナナメからの視点であったりするのが面白みになっています。
例えば、第一話のいくらトーストが出てくるお話では、いくらトーストを食べながらいくら1つ1つの生命の事を考え、さらには生き物の生死についての考察が始まり、最後は魚卵にまつわるウンチクが語られた後で「ほとんどの生き物にとって死ぬ方がメインストリームじゃん」と主人公の中で結論付けます。
そんな完全に何かこじらせている主人公ですが、それでもささやかなご飯から得る楽しみで、また明日も生きていこう、と思えるのです。
グルメとは別の部分では、繰り返し書いてきましたが「数々のアルバイト」描写が超リアルです。
僕もかなりの数のバイトを今までにやってきたのですが、それぞれのバイト体験のディティールが「本当に体験してないと描けないんじゃないか」と思えるレベルなので、僕の想像ではheisoku先生自身が結構様々なバイトしてきた人なんじゃないかな、と思いました。
で、バイト描写がリアルだからこそ、日々のバイトに疲れる主人公の感じ、そして帰ってからのご飯に救われる感じに説得力があります。
たぶん、全人類が楽しめるタイプの漫画ではないと思うのですが、似たような経験があるような人にとってはめっちゃ刺さる作品なんじゃないかな、と思いました。
とにもかくにも、出会ったことのないタイプの独特なバイト&グルメ漫画です。
『ご飯は私を裏切らない』を読んだ皆さんの反応
『ご飯は私を裏切らない』はアルバイトばかりで擦り切れた主人公の心を食べ物と食べ物への好奇心が癒す不思議な漫画
この『ご飯は私を裏切らない』は万人に刺さるかどうかは分かりませんが、バイト三昧でくたびれている人や、日々生きていく中でなかなか希望や救いが見つけられずにいるような人には全力でおすすめしたいです。
また、グルメ漫画としても美味しそうな食べ物がいっぱい出てきます。
いくらトースト、ホットチョコレート、ローストビーフいくら丼、おにぎり、キャベツとチーズのホイル焼き、ハンバーガー、カレーうどん等々。
そして、作者であるheisoku先生がご自身のホームページにて『ご飯は私を裏切らない』に出てきた料理を実際に作った写真を載せてくれているので、読んでから、あるいは読む前にその写真を見てみるのもオススメします。
特にいくらトーストがうまそう!
この漫画は紹介してきたように、かなりクセのある漫画であることは間違いないので、まずは試し読みだけでもしてみて欲しいと思います。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
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