漫画というのは基本的に何も予備知識無く読んだ方が、より楽しめることも多いです。
しかし今回ご紹介する、『無限の住人』などの沙村広明先生による読み切り漫画『ブラッドハーレーの馬車』は、ちょっと予備知識があった方が良いのではないかと思う漫画です。
沙村先生自らが「赤毛のアンみたいな物語が描きたかった」として生まれたとされるこの『ブラッドハーレーの馬車』は、純粋に赤毛のアンみたいな物語を期待してみると地獄を見ることになります。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
ブラッドハーレーの馬車 | 沙村広明 | 太田出版 | 2009年 |
『ブラッドハーレーの馬車』を読んだら……
眼をそむけたくなる程に凄惨なのに芸術的な、1つのアートのような作品が読めます。
『ブラッドハーレーの馬車』はどんな漫画?
『ブラッドハーレーの馬車』は、冒頭で触れたように「沙村広明先生の無限の住人などが好きで、オシャレなタイトルだから読んでみようかな」なんて動機で読んでしまうと返り討ちに遭う漫画です。
そこで今回ばかりはザックリとネバタレありで紹介しようと思いますので、何の先入観もなく読みたい!と言う方はここで引き返して↑↑にある試し読みをしてみて欲しいです。
では、ここから多少のネタバレありで、『ブラッドハーレーの馬車』がどんな漫画か、紹介いたします。
まず、タイトルにもなっているブラッドハーレーというのは、資産家であり貴族院議員であるブラッドハーレー公爵のこと。
そのブラッドハーレー公爵は「ブラッドハーレー聖公女歌劇団」という歌劇団を経営しています。
その歌劇団の人気はすさまじく、なんとなく雰囲気的にも現代日本の宝塚のようなものだとイメージしちゃって良いかと思います。
で、その歌劇団の劇団員は、全員がブラッドハーレー家の養女という変わった構成になっており、その養女達は皆各地の孤児院から集められていました。
親がいなかったり、死んでしまったりで孤児院で暮らす少女達にとってはブラッドハーレーの歌劇団に入ることは何よりの夢であり希望でもあったのです。
そしてそのブラッドハーレー家の養女に選ばれるチャンスは年に1度訪れ、各孤児院で一人だけ選ばれます。
選ばれた少女は友達や孤児院の先生達に羨望のまなざしを浴びつつ、馬車に乗ってブラッドハーレー邸へと明るい歌劇団での生活を夢見て向かっていくわけです。
――と、ここまで序盤を読んで、「おお、なんだか素敵な物語が始まりそうだ!」とワクワクするのですが……ここからが本当のデモンズソウル。
実際に歌劇団に入れる少女もいるのですが、ほとんどの少女はなぜか刑務所に送られます。
そして、そこで無期刑が決まっている男囚達の性のはけ口とされます。
そして歌劇団に入れると思っていた少女は身も心もボロボロになり、犯され続けるうちに数日ともたずに息絶えていきます。
「あ、思ってたのと違う……」
と感じても、恐ろしいのが沙村広明先生の画力と物語構成力とでグイグイ惹きつけられ、8話まで、徹頭徹尾救いのない物語なのにも関わらず、どんどん読み進めてしまうことになります。
芸術性が異常なまでに高い作品な気がしました。
ブラッドハーレー公爵はなぜそのような「仕組み」を作ったのか?
孤児院の少女達を利用するのはなぜなのか?
そんな地獄はいつまで続くのか?
欲望と政治に翻弄され、ただひたすらにひどい目に遭う少女達の絶望の物語、それが『ブラッドハーレーの馬車』です。
ただ単に絶望しかない物語なのかどうかは、あなた自身で確かめてみて下さい。
孤児院から送られた少女達目線だけでなく、囚人側であったり、刑務所の刑務官の視点も描かれているので、ただの胸糞悪いエロ漫画ではないことはしっかりとお伝えしておきます。
『ブラッドハーレーの馬車』はどんな人におすすめ?
『ブラッドハーレーの馬車』をおすすめするなら、というのはかなり難しいのですが、強いて上げるならば――
救いのないダークな物語が好きな人。
人間のどん底での心理描写を読みたい人。
救いは無いのに美しい、そんな芸術的狂気の漫画が読みたい人。
なぜか読み進めてしまう謎の魔力を持った漫画が読みたい人。
などでしょうか。
読後感は人によって様々でしょうし、気持ちが沈んじゃう人もいるかも知れませんが、僕は「暗かったけれど上質な映画を観た後」のような気持ちになりました。
救いは確かになかったけれど、人間の愚かさであったり暴政の末路であったり、考えさせられる非常に読み応えのある読み切り漫画だったと僕は思います。
ただ確かに万人にはおすすめできない笑
『ブラッドハーレーの馬車』を読んだ皆さんの反応
基本的には胸糞漫画で間違いないと思います。
そう、本当にすすめどころが難しい漫画です。
僕と同じですね↑↑。絶望しかない物語だったのに、読後感は良かった……非常に共感できます。
タイトルで血まみれハーレムなエロ漫画かと思ってはいけません。
↑↑この方のつぶやき、読めばわかりますが、実に的を射てる気がします。
救いのない物語だが圧倒的に魅せる『ブラッドハーレーの馬車』を読んで漫画の秘めたポテンシャルを感じろ!
長々と紹介してきましたが、とにかくこの『ブラッドハーレーの馬車』が軽い気持ちで読むと地獄へ突き落されるタイプの漫画であることはわかっていただけたのではないかと思います。
そしてこれも繰り返し書いてきましたが、非常に魅力的な漫画でもあるのです。
いえ、魔力的と言い換えた方が良いかも知れません。
漫画って凄いです。
時に映画や小説を超えるような没入感に浸れることもありますから。
『ブラッドハーレーの馬車』をただの鬱漫画だと聞いていて読むのをためらっていた方がもしいましたら、確かに鬱漫画ではあるのですが何か恐ろしい魔力を秘めた漫画でもあるので、そこはぜひ味わってみて欲しいです。
試し読みだけでも絶望感の片鱗は味わえるので、良ければチェックしてみてください↓↓。
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