時代劇ファンにはお馴染みの「コミック乱」を発行するリイド社の人気作品の『差配さん』という漫画を知っているでしょうか?
江戸時代の猫とおっさんがイコールというぶっ飛んだ設定でありながら、とても人情味溢れる傑作になっている『差配さん』を描いたのが、今回ご紹介する短編集『ワカダンナ』の作者塩川桐子先生です。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
ワカダンナ | 塩川桐子 | リイド社 | 2017年 |
もし「コミック乱」の事も『差配さん』という作品のことも塩川先生の名も知らなくても、時代物が好きなら是非読んでみて欲しい一冊です。
特に塩川先生の拘りまくりな江戸っ子言葉と、浮世絵を確実に意識しているであろう登場人物の顔などが最高に洒落てます。
そしてどのお話も、江戸時代の人々の息遣いすら感じるリアリティに溢れた、それでいてほっこりしたり感動したりできる作品が詰まっています。
余談ですが、塩川先生の『差配さん』に出てくるキャラも登場するので『差配さん』が好きな方にもおすすめです。
『ワカダンナ』を読んだら……
江戸の市井の暮らしと素敵な物語に心躍ります。
『ワカダンナ』はどんな漫画?
僕、個人的にですが時代モノ・歴史モノが大好物でして、非常に『ワカダンナ』みたいな漫画はツボるのです。
さてこの『ワカダンナ』がどんな漫画かと言うと、江戸の町で起こる様々な人物の様々な物語です。
これだけじゃあわからないでしょうから、簡単にネタバレし過ぎぬよう各話ざっくりどんなお話か紹介しますので、参考にしてみてください。
ワカダンナ
最初のお話は表題作でもあるワカダンナ。
ご察しの通り、小間物屋の若旦那と小僧がメインのお話。
なんとも頼りなさげな若旦那なのですが、後半にかけて若旦那の価値観であったり考え方であったりが明らかになり、さらに恋の相手も登場し始めると一気に「良い男」に見えてくる不思議。
いちいち若旦那のセリフが沁みます。
表題作に相応しい、面白さもあり感動もできるとても良いお話です。
萩の宿
萩の花が見事に咲きならぶ頃、その人は必ずある事を思い出してしまうから萩は薄気味悪いのだと言う……。
そんな始まりの、萩を恐れるようになってしまった棒手振り(ぼてふり)の男の回想譚。
棒手振りというのは、棒の両端にタライを引っ提げて売り歩く、たぶん時代劇で一度は見たことがあるであろう売り子のこと。
そんな棒手振りの男が、新たな得意先を探してとある豪華な山小屋に迷い込むお話。
なんとなく予想できる展開……と思いきや、ちょっと外された違う結末で結構沁みました。
どんなことが人生の転機になるか、わからんものなのです。
蛙―かはづ―
一緒になりたいのになれない、なんとももどかしい恋のお話。
ただの恋の話ではないのが、男は店の番頭であり、腹に一物あるから。
本当は好きなのに、一緒になれない理由がある。
タイトルの蛙が最後になって効いてくるじんわりと面白いお話。
雪
これまた恋のお話。
遊女がとあるお金持ちに落籍(遊女やめれるシステム)されることになるのですが、その遊女の元へ通い続けてきた男が「一緒に抜けだそう」と持ち掛けてくるところからお話が始まります。
割とありがちな遊女と客の恋愛物語かと思いきや、抜け出そうと持ち掛けていた男とその遊女との関係が次第に明かされていくとどんどん切なくなってくる上手いお話。
最後の雪がより切なさを引き立てます。
侠―きゃん―
短く、ストレートに笑える江戸の男女のちょっとしたいざこざのお話。
短いのであまり書きませんが、凄く良い読後感で好きです。
ふきちゃん
27歳という年齢で寺小屋に習いに来ている女性ふきちゃんを巡るお話。
ふきちゃんが男性の先生を狙っている噂があったり、先生がふきちゃんをちょっと気になっていたり、面白く読めます。
最後にはとてもキレイなオチがつき、笑えて教訓にも出来るさっぱりとした良いお話。
『ワカダンナ』を読んだ皆さんの反応
洗練されている感じですよね、わかります。
『ワカダンナ』に収録されている作品の中では一番この「雪」が切ないお話だと僕も思いました。雪の使い方もうまいです。
『ワカダンナ』は時代劇好きにおすすめな江戸で巻き起こる様々な人情物語6編が詰まった傑作読み切り短編集
江戸時代の江戸の市井(しせい)を描いた漫画、というだけで評価点高いのに、ものすごく洗練されたセリフ回しに浮世絵っぽいタッチの絵、そして笑えて泣けて心あたたまるストーリーと、大満足の短編集になっています。
時代物好きな人だけでなく、ちょっと今とは違うけれども確かに人情味あふれる人々が生きていた時代に思いを馳せるきっかけにもなるので、誰にでもおすすめできる漫画になっています。
読んでみないと雰囲気つかめないと思うので、とりあえず試し読みだけでもしてみてくださいね!
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