アートスクールで出会った少年2人。
皆から疎まれていた少年は、もう1人の少年と出会うことで少しだけ外へと心を開く。
そして心を少しだけ開いた少年の苦悩と願望は、その圧倒的なまでに暗く、美しい絵にのみ現れていた……。
――今回ご紹介するのは、原縁瑛吉（はらへりえいきち）先生による『彼女の地中で花は咲く』です。
この作品はアフタヌーン四季賞2020秋において佳作を受賞した作品です。
多くは語らない作風ながらも、心の優しく響く人物達の想いが素敵な優しく、あたたかく、芸術的な読み切り作品になっています。
『彼女の地中で花は咲く』は一言でどんな漫画？
絵にしか自分の本当の姿を描けなかった少年と、それに気づいた少年との心の交流を描いた美しく優しい芸術的読み切り。
この時点でもう読みたい！と思った方はぜひ読んでみて下さい。
読もうか迷っている方は、この記事を読み進めて判断していただければと思います。
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| タイトル | 作者 | 本編ページ数 | 読めるサイト |
| 彼女の地中で花は咲く | 原縁瑛吉 | 49ページ | コミックDAYS |
『彼女の地中で花は咲く』の超ざっくりあらすじ
アートスクールに通う梅津は、その日スクールの地下にある「地下牢」と皆から呼ばれるアトリエで、衝撃的なまでに美しい一枚の絵を見た。
その絵を描いたのは、皆から天才、変人、と両極端の評価をされ、また常に1人で過ごしている柏谷という生徒。
梅津は柏谷とあまり話したこともなかったが、その日は柏谷の方から絵のタイトル「彼女の地中で花は咲く」を教えてくれ、さらにいくつか話しかけられた。
その日以降、徐々にではあったが、柏谷と梅津は互いに話をするようになっていく。
そして梅津は、時折柏谷がアパートなどで発作を起こすこと、梅津の書いた絵を梅津の知らないところで熱心に眺めていることなどを知った。
しかしそんな日々が続き冬になると、柏谷はパッタリと梅津の前に姿を現さなくなってしまう。
誰にも知られず苦しんでいた柏谷の心の内を梅津だけは絵を通してなんとなく理解していたのだが……。
『彼女の地中で花は咲く』のネタバレあり感想
アートスクールに通う少年2人、柏谷と梅津とのゆるくて温かい心の交流が描かれていた作品。
作中、あまり細かな説明はなされず、多くの部分は読者が考えて補完しつつ読む必要があります。
そしてこの作品の核となっているのが、柏谷という少年の心の中。
冒頭でも登場する柏谷の絵につけられたタイトルは「彼女の地中で花は咲く」。
最後まで読めばわかりますが、彼女とは他ならぬ柏谷本人のことであり、柏谷が自分の中に眠る「女性としての心」を隠し、苦しみ、それでも本当は認められたいと思っている葛藤が絵には表現されているのです。
故にその絵は、梅津が感じたように「本来暗いものですら美しい」という印象を人々に与えます。
昨今、セクシャルマイノリティを扱う作品というのは爆発的に増えました。
世界的にもその流れは加速しているわけですが、そうである一方、やはりそれを明かせずに苦しむ人というのもたくさん存在しています。
この作品での柏谷がまさにソレで、その証拠に柏谷が梅津に対して抱くほのかな好意を明かした後、柏谷は梅津の前から去っていってしまっています。
隠さず、前向きに梅津と接すればいいのに、そうはできない後ろめたさや恥ずかしさが柏谷にはあったのでしょう。
梅津もそれをよく理解していて、柏谷が姿を見せなくなり周りの人間からは「死んだのかも」と心無い事を言われていても、1人柏谷の理解者で有り続けます。
柏谷は死んだわけではない。
地中に潜っているだけ。
その梅津のセリフの後のラストカットがこれまた非常に美しく、なんだか泣けます。
欲を言えば、地中に潜り心と身体のバランスを整え、また梅津の前に現れてくれた柏谷の姿も見たかった気がしますが、この先の展開も読者それぞれの心の中で想像するほかなさそうです。
――総じて、想像力を刺激される、優しくてあたたかい読み切り作品でした。
『彼女の地中で花は咲く』は絵にだけは描かれていた彼と彼女の繊細で複雑な心の中を物語にしたおすすめ読み切り漫画
少年2人の複雑で微妙な関係。
そして徐々に育まれる友情に、それ以上の感情……。
絵を通して表現される、繊細な心の内。
いやはやなんとも美しく考えさせられる素敵な読み切り作品でした。
繰り返しになりますが、あまり説明はなされないので、もしかしたら僕とは全然違う印象をこの作品から受ける方もいるかも知れません。
けれどもおそらく「優しさ」と「美しさ」は共通して感じることが出来るのではないかと思うのです。
もしまだ読んでいないのであれば、きっとあなたの心に小さな花を咲かせてくれると思いますのでぜひ読んでみてください。
そしてこの『彼女の地中で花は咲く』が面白かったのであれば、作者である原縁瑛吉先生を応援し最新情報をチェックしてみてください。
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