人が老いなくなる不思議な霧。
その霧に包まれた世界では、人々は記憶を失い、安らかな眠りを願う――。
――今回ご紹介するのは、多部仁先生によるそんなディストピアな雰囲気漂う近未来での不思議な物語『霧に旅して』です。
『霧に旅して』は一言でどんな漫画?
毒の霧の影響で記憶を失った男が、旅する途中で見つけた日記を辿り「誰か」の人生を辿っていく感動の物語。
この時点でもう読みたい!と思った方はぜひ読んでみて下さい。
読もうか迷っている方は、この記事を読み進めて判断していただければと思います。
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タイトル | 作者 | 本編ページ数 | 読めるサイト |
霧に旅して | 多部仁 | 42ページ | コミックDAYS |
『霧に旅して』の超ざっくりあらすじ
毒を持った霧に包まれてしまった世界でのお話。
その霧は人々から子供を産む能力を奪い、記憶力も低下させ、代わりに老いることのない身体を与えた。
主人公の男は、その日泊まる為の建物を探していた。
すると朽ちたビルの一角で寝泊まりしている短髪の男と出会い、食事と一泊させてくれる約束を取り付けることに成功した。
ところが短髪の男から与えてもらった食事を終えると意識が朦朧としてしまい、危うく殺されそうになってしまう。
偶然にも短髪の男が朽ちた手すりのおかげでビルから転落してしまい、男はなんとか命拾いする。
男は短髪の男が暮らしていた部屋を物色していると、誰かの書いた日記を発見する。
その日記には、妻と別れ1人で旅をする決意をした男の事が書かれており、男はなんとなくの気晴らしにその男の足跡を辿ってみることにするのだが……。
『霧に旅して』のネタバレあり感想
とても独特な絵柄と独特な雰囲気に包まれた作品で、読んだ後にとても心があたたかくなりました。
「霧」に包まれている世界が舞台で、人類はどれぐらい残っているかもわからないような状況。
そしてその霧の面白い特性が、老いなくなるということと、記憶を失っていってしまうということ。
これは作中の中盤で出会う姉弟がなかなか深いことを言っています。
「実は霧は人を殺すために作られたものではなくて、その逆なんじゃないかっていう噂がある」と。
人は霧によって、忌々しくストレスの原因となる「記憶」から開放され、傷も病気も治りやすくなり、老いなくなり、不必要に人を増やすこともしなくなった。
つまりそれはなんらかの治療の為の霧なのではないか?と。
読み切り作品ですし、しっかりと霧の正体がわかるところまでは描かれませんが、それでもなんだか物語と世界観に深みを与える描写だったように思います。
――さて主人公の男は、冒頭に泊まったビルで見つけた日記を辿り、「誰か」の足跡を追う旅を続けます。
途中の姉弟がうっすらと「それはあなたの日記なんじゃないの?」という意味深なヒントをくれていましたが、最後まで読んでもハッキリとその日記が男の物であったかどうかは描かれていません。
ひねくれずに読めば、おそらくはその日記は男自身のもので、最後には家にたどり着いて妻の「おかえり」に「ただいま」と返せたんだろうな、と思えるのですが、はっきりとそれが描かれていないからこそこのお話は深いな、と僕は思いました。
記憶すら曖昧で、結局その日記が誰のものであるかはわからない。
それでも、なんとなく導かれるままにたどり着いた家で、なんとなく誰かの妻の「おかえり」に「ただいま」と書いてあげる。
それは男が「おかえり」と書いてくれていた人物と直接関係あったかどうかは重要ではなく、人としてのやさしさで男は「ただいま」と書いたのだと思うのです。
人間と出会うことのほうが珍しくなってしまった世界での、人間としての振る舞いであり男なりの優しさ。
そして、もしそれが男自身の妻が書いたものであればこんな素敵な話はないよね――という想像までさせるところにこの物語の上手さがあるように思います。
なんとも読後感はあたたかな気持ちに包まれる、素敵な作品でした。
『霧に旅して』を読んだ皆さんの反応
『霧に旅して』は霧に包まれた世界で本当の記憶を探し求め旅する、深くて感動的なおすすめ読み切り漫画
霧に優しく包み込まれるような読後感の、優しくて素敵な物語でした。
絵にクセこそありますが、内容はとても面白いのでもしまだ読んでいないのであればぜひ読んでみてください。
想像する面白さが堪能できる素晴らしい作品になっています。
そしてこの『霧に旅して』が面白かったのであれば、作者である多部仁先生を応援し最新情報をチェックしてみてください。
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