人に言うのがちょっと恥ずかしいような趣味、心底好きなんけれど、一般的に女性しかやらないからバカにされそうな趣味――。
今回ご紹介する読み切り漫画は、堀鳩先生による小さい頃から刺繍に興味を持ち、密かに腕を磨いてきた男子高校生の物語『Bombyx mori』です。
このご時世、どんな趣味を持っていたっていいじゃないか! 堂々と好きなモノは好きだと言えばいいのです!
と、読みながら思いましたが、しかしこの漫画で描かれていたように快く思わない人物が出てくるのも当然のこと。
それはどんな趣味であっても共通していることです。
果たして刺繍大好きな男子高校生は大好きな趣味とどう向き合っていくのか? ぜひ読んでみてください。
『Bombyx mori』は一言でどんな漫画?
刺繍が大好きな男子高校生が刺繍の師匠と出会い成長し、家族にも認められていく青春刺繍物語。
この時点でもう読みたい!と思った方はぜひ読んでみて下さい。
面白そうかどうかの判断がつかない方は、この記事を読み進めていただければと思います。
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タイトル | 作者 | 本編ページ数 | 読めるサイト |
Bombyx mori | 堀鳩 | 45ページ | コミックDAYS |
『Bombyx mori』の超ざっくりあらすじ
学校が終わった後、いつも友人たちとは遊ばずに直帰する変わった高校生、桐生(きりゅう)は小学生の時からハマっている刺繍が大好きでした。
お年玉をもらっても刺繍糸に使ってしまう程に刺繍が好きなのですが、父親はそんな桐生の趣味をよく思っておらず、「男の子なのに――」とよく文句を言っていました。
そんな父親の態度から学んだ桐生は、刺繍の趣味を公言することなく、自分だけの密かな楽しみとして続けていたのです。
ある日、桐生は友人に誘われて「何なのかわからない怪しい店」に誘われます。
友人と入って見ると、そこは一人の女性・百花(もか)が切り盛りしている雑多なものを売っているお店だったのですが、桐生は百花が羽織っているジャケットの刺繍のクオリティに驚愕します。
思わず百花に聞いてみると、百花が自分で刺繍したデザインであることがわかり桐生は更に驚きます。
別の日、ずっと百花の刺繍の事を考えていた桐生は、思い切って百花に刺繍で弟子入りをお願いしてみることに。
百花に自分の腕を見てもらうべく桐生が自分で刺繍した物も見てもらったのですが、桐生の刺繍を見た百花は「弟子云々ってレベルじゃなくてすぐにお金取らなきゃダメ!」とものすごく桐生の腕を褒めてくれたのです。
その日から、桐生は百花と一緒に大好きな刺繍に堂々と打ち込み、素晴らしい作品をどんどん作っていきました。
しかし、そんな桐生の様子を見た父親はまたしても冷たい言葉を桐生に浴びせて……。
『Bombyx mori』のネタバレあり感想
まずこの作品の主人公である桐生がハマっているものが刺繍と言う点が面白かったです。
古いイメージから言うと確かに桐生の父親がそうであったように、ちょっと男の子らしくない趣味なのかも知れませんが、今の時代はなんだって堂々とやっていい時代ですから、時代錯誤というものでしょう。
こういう自分の本当に知らない世界を教えてくれる漫画というのは読んでいて楽しいです。
以前紹介した『すずめちゃんの剥製浪漫』は剥製というマジに無知な世界を教えてくれる漫画でしたが、やはり新しい世界を知れるというのは楽しいものです。
贅沢を言えば、もっと踏み込んだ刺繍の事がしりたかったなぁ、なんて思ったほどです。
さて漫画内のお話ですが、途中桐生は百花に弟子入り志願に行きます。
しかし百花は弟子どころかすぐに売れるレベルだよ、と絶賛し本当にすぐに売る手はずを整えてくれるのですが――この辺りの描写は今っぽいなぁ、と思いました。
もう、本当に才能ある若い子は弟子入りだなんだなどと古臭いことやってないで、すぐに飛び立っていくべきですよね。
それに、社会的な雰囲気もそれを後押しする感じになっていると思います。
そういう雰囲気というのは、この作品のように漫画などにもしっかりと反映されていくのでしょう。
そしてこの作品の結末ですが、最後まで嫌味を言い続けた父親への反撃、気持ちよかったです。
本当にやりたい事があるのなら、誰にも止められないですし、止まらなくていいですよ、ええ。
総じてしっかりと王道展開でありながら、刺繍と言う珍しい題材を描いたとても興味深くて面白い読み切り作品でした。
余談ですが、タイトルのBombyx moriは調べた限りではカイコ・カイコガのこと。刺繍糸(絹糸)などが出来るまでには、カイコが糸を吐き繭玉を作り、その繭玉が糸の原料となります。カイコから作られる絹糸で出来たものがシルクと呼ばれます。
『Bombyx mori』を読んだ皆さんの反応
『Bombyx mori』は刺繍に目覚めた男子高校生が趣味を認められ、前向きに考えられるようになるまでの青春刺繍物語
刺繍というちょっと珍しい題材の興味深く面白い物語『Bombyx mori』。
面白かったですね。
この作品の作者である堀鳩先生は、かつてタトゥーの彫り師の漫画も描いているので、おそらくは先生自身が細かな作業が得意なのかも知れません。
とにもかくにも、どんな趣味であっても本当に好きな事があるのなら突き進むべきですし、そもそも自信を持って言える「好きな事」がある事が素晴らしいことだったりします。
そんな前向きになれるメッセージの篭められた、読後感も爽やかな読み切り漫画でした。
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