特に問題が起きていたわけではなく、いつも通りに幸せそうに笑っていたはずなのに……。
結婚式の前々日に妻が自殺してしまう、という衝撃的な出来事から始まる黒谷知也先生による短編集『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』。
表題作は妻の自殺というかなり重い展開から始まりますが、決してサスペンス漫画でもなければ超悲劇的な漫画でもありません。
それはこの漫画の作品に共通しており、あくまでも淡々と、ちょっと深くて、ちょっと切ない、そんな空気感が漂う作品群が収録された短編集になっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
幸福はアイスクリーム みたいに溶けやすい | 黒谷知也 | 電書バト | 2020年 |
読むと元気がもらえる! というような短編集ではなく、心がフラットな時にじっくり読んで、時折考えながら世界に浸ってほしい――そんな雰囲気重視の日常系短編集になっています。
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』を読んだら……
ちょっとだけ日々を大切に生きよう、と思えます。
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』はどんな漫画?
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』は、最後の「幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい」の前日譚となる描き下ろし「海を見に行く」以外は全て独立した読み切り漫画になっています。
ここでは簡単にそれぞれの作品をネタバレしない程度に紹介しますので、読もうか悩んでいる時には参考にしていただければと思います。
幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい
冒頭でも触れた、妻が自殺してしまうというヘビーな始まりの物語。
自殺の謎を解明しようとする旦那さんですが、やはりどうしてもわからない。
物語、というよりはある夫婦の辿った1つの選択、というような、淡々とした内容が逆に考えさせられます。
図書館の帰り道
4ページの短編。
とある女性の、幸せと絶望の一日のお話。
露店ですくって獲った金魚がキーになっているのですが、心温まるかなり好きなお話です。
ひとり暮らしの大学生が泣いていた
マンションでの火事と、震災後どこか落ち着かない心になってしまった心理とを描写したお話。
何か大きな災害が起きた後というのは、人に新たな考え方を植え付けるものです。
平日に、オープンテラスで
大学生の女性が、かつて憧れたクラスメイトの女性とばったりカフェで再会するお話。
そのクラスメイトと大学生の女との間には1つだけ心に引っかかっているものがあり、今でもそれを打ち明けられずにいます。
誰にでもあるであろう、ほんの少しの心のトゲを感じるお話です。
自転車は晴れ
書道教室に通う少年の恋のお話。
恋した相手が双子だと……どうなるものなんでしょう?
血縁ある四人の女の午後
姉妹と、妹の娘とが3人で入院している母親を車で見舞いに行くお話。
妹の娘が「見えないネコがいる」と話しており、松本大洋先生のGOGOモンスターを思い出しました。
子供は神様との親和性が高いから、見えない猫が見えることもある――とお姉ちゃんが言うセリフが妙にしっくりきました。
甘党兄弟
お互い甘党な兄弟の、付き合っている女性とはまた違う兄弟ならではの「絆」のお話。
メモリーズ
なぜか昔からギクシャクしがちだった娘と母のお話。
最後、ちょっとうるっとしちゃう良いお話。
少女とカメラ
少女とカメラ、そしてお父さんとお母さんのお話。
カメラって、本当に良くも悪くも一瞬を切り取るもの。
なんだか考えさせられるラスト1コマでした。
書店員 波山個間子
黒谷先生の『書店員 波山個間子』が連載するもとになった作品――と先生自らあとがきにて書かれています。
書店で働く本の紹介をさせたらピカイチな波山さんの、不思議な雰囲気のお話です。
『書店員 波山個間子』ファンの人も原点を知ると言う意味でもぜひ。
谷後先生
中学生の少女が、一年間だけ担任の先生の代理として来た上品なじいちゃん先生に不思議な感情を抱く不思議なお話。
僕は正直に言って中学生の時に「上品」も「下品」もあまり区別できなかったので偉そうなことは言えませんが、確かに先生にも「品」があり、人気のある先生ほど上品であったような気がします。
海を見に行く
表題作の前日譚。
そこに妻が自殺してしまった秘密が隠されているわけではない(と思う)のですが、確かに幸せだった日々があり、2人だけの時間があったのです。
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』を読んだ皆さんの反応
『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』は淡々とした日常の儚さを描写した雰囲気重視な短編集
今回ご紹介した『幸福はアイスクリームみたいに溶けやすい』は、好み分かれるような気はします。
淡々としている空気感系漫画ですし、必ずしも救いがある内容でもないからです。
ただ、じんわりと心に沁みてくる何かがある……そんな作品です。
そして読み終わった後、ちょっとだけ人生や生きることについて考えてみたくもなる作品でもあります。
フラットな気分で、この独特な空気感に浸ってみてください。
もしかしたら、全然違う何かを感じることができるかも知れません。
ブログ内で紹介してきた1巻完結・読み切り漫画の中から厳選した本気のおすすめ漫画特集、よければあわせて読んでみてください↓↓
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
コメント