『ゴルゴ13』や『剣客商売』などで知らぬ者はいないほどに有名な大御所漫画家さいとう・たかを先生。
ひたすらに渋くてかっこいい「漢」が主役の作品を多く描いているさいとう先生ですが、今回ご紹介するのは1979年に描かれた、勧善懲悪モノの真骨頂とでも言うべき痛快時代劇漫画『拝札人』をご紹介いたします。
拝札人(はいさつにん)とは、町の権力者に雇われた「切り捨て御免」の紋章を持つ特別改役のこと。「切っても許される主人公」という設定は時代モノ好きとしてはこの上なく楽しい設定です。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
拝札人 | さいとう・たかを | リイド社 | 2013年 |
『拝札人』を読んだら……
1巻完結なのに面白くて骨太な時代劇が堪能できます。
『拝札人』はどんな漫画?
『拝札人』の舞台は武蔵国の丹阿弥(たんあみ)という村です。
養蚕で名高い丹阿弥は、地理的条件の悪さで無法者が良く訪れる町としても有名で、そういった無法者を取り締まるべく「拝札人(はいさつにん)」と呼ばれる切り捨て御免(殺生してもお咎めなし)の紋章を持つ特別改役を雇っていました。
さてこの『拝札人』、非常に読み応えのある1巻完結の漫画で、ページ数はなんと500ページを超えます。
構成としては、各話ごとに完結する読み切り漫画ですが、うっすらとお話は繋がっているような構成。
1巻完結なので、大ボリュームで満足度も非常に高い傑作です。
それでいて時代劇としての面白さも凝縮して詰め込まれているので、時代劇好きなら文句なしにオススメできます。
読むかどうか迷う方の為に、ざっくりと各話内容をネタバレしない程度に紹介してみますので、参考にしていただければと思います。
第1話:うすばか下郎
丹阿弥の町を取り締まる拝札人のエピソード。
しかし1話で描かれる拝札人は主人公ではありません。
ちょっとした細工があり、良い意味で予想を裏切る展開になりました。
ウスバカゲロウを決めゼリフに使うカッコよさよ。
第2話:風神党始末
新たな拝札人「薄羽影郎」爆誕のエピソード。
近隣でも恐れられている「風神党」というゴロツキ集団と戦うお話。
各話、ラストカットがマジに痺れます。
第3話:中仙道恋道行
丹阿弥の町の養蚕技術をさらに高めるべく、京都の西陣から職人を引き抜く密命を受けた拝札人。
職人とその愛人とを連れ、中仙道を行く苦難の旅程のお話。
職人の男と愛人との情事を「ちっ、湯冷めしちまうぜ……」と言いながら待ってあげる薄羽さんマジイケメン。
第4話:朝焼けは血の色
拝札人薄羽影郎の過去がちょっとだけ垣間見える、昔同じ道場で学んだ男が刺客として丹阿弥へとやってくるお話。
薄羽の流派が穴風流(けっぷうりゅう)だということも判明。
ほんの少しの油断、そして介入が生死を分ける死闘の行方やいかに。
第5話:冥途旅一里塚
丹阿弥の養蚕技術の賜物である「種繭」を強奪しに来たシノビとの戦いの話。
怪しい坊主と槍坊主に宝蔵院の影を見た。
相変わらずのセリフのキレの良さにいちいち痺れます。
「このド腐れ野郎め‼」
第6話:進むも退くも地獄橋
相模の牢人、藤巻孫兵衛という剣士が拝札人の座を奪うべく薄羽と決闘することになるお話。
この牢人は非常に出来た人物なのが印象的で、あくまでも丹阿弥の町の権力争いに巻き込まれただけなのがちょっとかわいそう。
拝札人である薄羽も冷や汗をかく程の使い手である藤巻との決闘の行方やいかに!
第7話:織女誘拐騒動
とにかく毎度毎度誘拐や襲撃に遭う丹阿弥の町。
今度は高いレベルの織法を受け継ぐ織女が誘拐されます。
一度は食い止めるものの、更に女のシノビまでもが加わりまたも織女が誘拐されることに。
丹阿弥の町の高い養蚕技術の秘密が明かされる、剣劇とはまた別の面白さもあるお話です。
第8話:血風曼陀羅
丹阿弥の町の権力争いにまたも巻き込まれる薄羽の旦那。
割と中心人物の一人である町の権力者「野呂」の差し金で、スラっとした中性的イケメンな剣士が薄羽を仕留めに現われます。
かなりの裏切り行為をする野呂ですが、妙な関係性でずっと作品に出続ける不思議。
果たして拝札人は迫りくる眉目秀麗な剣士に打ち勝つことができるのか?いかに!
第9話:うすのろ捨吉
町人達から疎まれ、峠の炭焼き小屋でひっそりと暮らしている捨てられた男、「捨吉」のお話。
本当は高い身体能力があるにも関わらず、町の人の前ではそれを見せずひたすらに罵られ続ける捨吉に拝札人は「なぜそこまでこびるのか?」と投げかけます。
そこへまた丹阿弥の町を争うと画策する悪党が現れ、今回は頭を使って拝札人を違う用事で遠ざける事に成功します。
町の危機を拝札人はどう救うのか?
そして捨吉が取った行動とは?
いかに!
第10話:黄金郷群盗
丹阿弥の町が大久保長安の財産をこっそり隠している、というワクワクするお話。
松平伊豆守の使いが調査に訪れ、拝札人の雇い主である喜多和屋も野呂も大焦り。
どうなる? 隠し財産!
第11話:遠い死臭
最後のお話にして拝札人一番のピンチ。
博打好きで負けまくっている珍しい薄羽さんの姿も見れるお話。
過去に殺された親友の仇を討つべく、殺された男の妻と義兄と親友がやってきて薄羽へ襲い掛かります。
殺された男を巡る複雑な恋模様と友情、そして剣の腕も立つ男達との死闘の行方やいかに!
『拝札人』を読んだ皆さんの反応
『拝札人』はさいとう・たかを先生による斬り捨て御免のおすすめ痛快侍活劇漫画
やはり大御所さいとう・たかを先生の劇画、最高です。
切り捨て御免の紋章とかもうワクワクするしかないです。
さいとう作品の男って基本的に無口で渋い印象ですが、かならず愛嬌を見せる瞬間があってそこがまで心惹かれるのです。
秘め事の多い養蚕の町、武蔵国は丹阿弥の町を舞台に繰り広げられる、痛快剣劇。
時代劇好きならぜひ読んでみて欲しいですし、全力でおすすめしたい一冊です。
メインで利用する電子書籍サービスに悩んでいるようであれば、背表紙表示があるebookjapanがコレクション欲も満たしてくれるのでおすすめです。
詳細は記事にしてありますので、興味がありましたら読んでみてください。
コメント
けっきょく薄羽さんの過去は何だったんですかね
4話にて風間と対峙した際に、おなじ穴風流の居合いを使う道場出身者であることが書かれていました。
免許皆伝とも書かれていたので、相当の剣術使いであったことは間違いなさそうですが、それ以外は謎めいていますね。
そこんところ想像するのもまたよし――ということでしょうか。