学生運動や三島由紀夫の事件など、昭和の中でも特に激動の時代であった1960年代から1970年代。
そんな時代に生まれ、大人になった1人の男性のノスタルジックで甘酸っぱく、どこか暗い雰囲気も漂う独特な世界観の物語『ボクによろしく!』を今回はご紹介します。
作者は原作モノから実写ドラマ化された漫画まで数多くの漫画を描き続けている重鎮・木村直巳先生。
先生のタッチもまたどこか懐かしさを感じる絵柄なので、それと相まってどっぷりと懐かしい思いに浸れる作品になっています。
さらに、表題作以外にも2作品のホラーテイストな物語も収録。
とても読み応えもあり、様々な体験が出来る贅沢な1冊になっています。
タイトル | 作者 | 出版社 | 発売年 |
ボクによろしく! | 木村直巳 | eBookJapan Plus | 2010年 |
『ボクによろしく!』を読んだら……
懐かしき昭和の日々に浸れ、さらに子供心を中心に描かれたノスタルジックなホラーも読めて非常に贅沢な読後感を味わえます。
『ボクによろしく!』はどんな漫画?
この作品は、全部で3つの短編が収録された短編集になっています。
表題作である『ボクによろしく!』が約300ページのボリュームの内の200ページほどを占めています。
内容は、どの短編も懐かしさを感じるものとなっており、大人時代と子供時代とを行ったり来たりする構成になっています。
ここではそれぞれのお話がどんな内容かをざっくりと簡単に、かつネタバレなしでご紹介しますので、読もうか悩んでいる方は参考にしていただければと思います。
ボクによろしく!
もうすぐ子供が産まれるサラリーマン・山内勇が、かつて小学生時代に担任をしてくれていた女性教師に似た女性と出会うところから始まる物語。
勇の小学生時代の記憶と、30歳の大人になった時代とが交互に描かれる構成になっており、少しずつ勇の記憶が紐解かれていくのと同時に大人の勇の人生も進んでいくようになっています。
淡々とした調子で1970年代の勇の子供時代が描かれ、子供ならではの視点での描写も巧みでどんどん懐かしい気持ちになっていきます。
もちろん明るい記憶だけでなく暗くて悲しい記憶もあるのですが、「それも全て人生」とでも教えてくれているかのような不思議な包容力のある物語になっていて、最後まで安心して読み進められます。
ものすごく大きな展開があるタイプの作品ではなく、淡々としていながらも温かい人間模様と心の描写、そして懐かしい昭和時代をじんわりと楽しむ――そんな作品になっています。
また、主人公の勇が妻の出産間近という設定もすごくうまいな、と思いました。
ちょうど子供が産まれる直前のタイミングって、魔が差しやすかったり、あれこれ過去をさかのぼってみたくなるタイミングだと僕は思うのです。
そんなタイミングだからこその物語、そんな風に僕は感じました。
雪鬼村
とある雪深い村に帰省した主人公の青年。
そこで再会した女性と様々な過去を思い出していくのですが、なぜか青年には自分自身の記憶がなく……。
――この作品はじんわり怖くて謎めいたホラー作品です。
タイトルになっている「雪鬼村」での言い伝えが鍵を握っており、最後まで予想できない展開がとてもスリリング。
一度読み終わったら、もう一度最初から読んでみてほしいです。
きっと隠されている伏線に驚き、2度楽しめることでしょう。
子供たちの時間
この短編は、さらに3つのお話にわかれているシリーズもの。
子供ならはの感性・感覚をホラーに落とし込んだような作品で、どのお話もじんわり怖く、それでいて面白みもあります。
胸糞悪いようなお話は一つもないのでご安心ください。
『ボクによろしく!』を読んだ皆さんの反応
『ボクによろしく!』は懐かしさ溢れる昭和の日々と仄かに漂う恐怖が詰まった珠玉の短編集
今回は木村直巳先生の『ボクによろしく!』をご紹介しました。
あたたかく懐かしい表題作に、ちょっと怖くて不気味な短編まで、とても贅沢で読み応えのある短編集になっています。
味のあるタッチで描かれるノスタルジーな世界を堪能したい方には全力でおすすめしたいです。
絵の雰囲気を確かめるためにも、まずは無料での試し読みからでもぜひしてみてください。
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